梅雨明けましたねー。海の日ですねー。
5年ぶりの梅雨を乗り切った後は、5年ぶりの暑い暑い夏が待っていた。というわけで、サンフランシスコの気候にスポイルされきった私にはつらい季節が続いています。よく考えると、過去数年間、「歩いていて汗をかく」というシチュエーションがなかったのですから。汗は運動しなきゃかかない、というのが乾いて涼しいサンフランシスコ。
今年の梅雨の初めごろは、暑いのに汗が全然出なくて歩いていてのぼせてしまい、貧血気味になったことが何度かありました。最近、なんとか身体の機能が東京にアジャストされてきたみたいで、今度は会社に着くまでにお化粧が全部どろどろになってしまうのに困っています。
さて、先週月曜の東洋経済が総力取材というIFRSの記事「IFRS襲来!」を読んでみました。ので、日本のIFRS狂想曲(はじまったところ?)への感想を。
アメリカで話題になり始めた2007年くらいからIFRSはちくちくと勉強していたわけで、世間で話題になるころには、すでに飽きてしまっていたわたし(偉そうですよね、笑)。そもそも、USGAAPに心血注いて数年目にぽこっとでてきて、やれやれ、いつまでたっても新しいことが減らない、と若干気分的に疲れを感じたっていうのもあって、あまり愛情を感じなかった(笑)。日本も2009年中にアダプションに舵をきるんだろうな、という自分の予想はあたっててすこし満足したわけですが、世の中の流れだから仕方ないよねー、とは言え、若干引いた目で見てるところがあって、今度は大騒ぎしすぎかな、というのが今回の東洋経済を見ての感想でした。
いや、システム対応とかは面倒なことがいっぱいあるし、そもそも開示が変わるというのがどれだけ財務経理関係の部署の皆さまに大きな負担かっていうのはよくわかるんで、そういう意味では大変なんですよ。でも、すごくすごく大きい影響がある、と、それが仕事なんで会計事務所は声高らかにいますが、結局、会計はものさしであって、いい会社を悪くしたり、悪い会社をよくしたりすることはないんですよね。IFRSに移行した欧州企業の中で、会計基準だけの影響でいい会社になったとか、その逆も私は聞いたことはない。きっと、もともとこういうことが上手な会社はスムーズにやるでしょうし、そのへんのリテラシーの低い会社は移行もばたばたするんだろうけど、それが本質的な会社の価値をかえはしない。その辺、変に期待水準を上げすぎるのは危険だな-と思うわけです。
もちろん、「原則主義」という経営者の裁量の余地をおおきくする仕組み、包括利益に、資産負債アプローチと、もともとの考え方がちがうところはあるんだけど、日本の今のBSの資本の部も、結局資産負債アプローチの結果に近いものになってるし、包括利益も「今資本の部に入ってるものをもってくれば」出る仕組み。でもって、「世界に向けて会計報告を」っていうわけですが、日本の会社を買いたい人は、会計基準でどのくらいの差があるか、みたいなのはおいておいて、今までも買ってたわけじゃないですか。そこのところ、会計基準が変わった途端にものすごく外国人投資家が増えるかとかいうと。。。微妙だなあ。投資家ってそこまで、会計基準とか気にかけているのかしら。
まあ、そういう違和感はおいておいて、経理財務という実務をなさる方への影響というところに落とし込むと、影響が一番大きいのは、のれんの定期償却がなくなることでも、開発費を資産計上することでもなく、収益計上基準の部分だと私はおもってます。始まったばかりの工事進行基準がなくなるかも、ってだけで実務的にはいい加減にしてくれって話でしょうけど(苦笑)、日本はそもそも、「収益計上基準」の辺明確なルールがなかった、というのが、自分からみて一番大きな穴だったので。
今の日本の有価証券報告書にはついていない重要な情報が、「収益計上基準」。USGAAPでは、たとえばアップルであれば、iPhoneとiPod touchは収益計上の基準がちがう、そこまで細かなことがかいてあります。し、IFRSでも、BASFのFSをみてみたら、Accounting Policyの一番最初の項目がRevenue recognitionでした。
収益認識って結局「どこの期間に刻んで入れるか」ってはなしで、企業の中長期的な価値にはあまり影響しないのだけど、アメリカのように四半期の業績で株価が右往左往するような場所ではやっぱり厳密に運用されるのが大事なんですよね。その辺の繊細さを、アメリカの西海岸、ソフトウエアやテクノロジー企業の微妙な収益計上概念を日々いじくる中に一度突っ込まれてイヤというほど実感していたので「ああ、やっとそういう考え方が日本にも出てきたのね」というのが「財務アナリスト・・・」さんのところで紹介されてた「会計制度委員会研究報告第13号 「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察-」の公表について」でした。これ、日本版SAB104(USGAAP上の収益認識基準のバイブル)と私は呼びたい。し、今後の会社の収益計上の考え方を大きく変えるガイドになりそうな、読みごたえのある報告書。関係者の皆様にはぜひご一読を。
ちなみに、IFRSってわたし、アメリカ時代からのくせでアイファースとよびつづけてますが、日本では「いふぁーす」が主流みたい。で、その理由が、IFAC(International Federation of Accountants 国際会計士連合会)に読み方の平仄をあわせた。。。なぜならば、こちらでIを「アイ」と発音してしまうと、英語で言うFour letter wordsになってしまうから、と。(汗)
なるほど!なんですが、アメリカ人的にはIFRSはアイファースだろうなぁ、なんたって、IKEAもアイケアってよぶひとたちだもんね。
・・・ところでイギリスではIKEAはイケアなのか、アイケアなのでしょうか?IFRSはいふぁーすなのでしょうか、あいふぁーすなのでしょうか?
>投資家ってそこまで、会計基準とか気にかけているのかしら
あはは、最もな指摘ですね。気にかけないと言ったら嘘になりますが、利用できるものは何でも利用しよう、という性分なのでMore information is better というスタンスの人が多いかと思います。
特にlat37nさんのおっしゃる「収益計上基準」は興味ありますね。元々取材に行くと必ず聞く内容ですが、それがきっちり開示されるとその会社がちゃんとしているか、していないのかがすぐ分かるという意味で便利だと思います。だから、実際の数字が変わる事云々よりも、その会社のスタンスがより明確になるという意味で便利かと。
投稿情報: iloveapple | 2009/07/19 12:33
イギリスでもアイケアだよ。でもIFRSはどうだろ。授業ではアイエフアールエスって言ってたけど(笑)実務者がどう読んでいるかは知らないけど。
会計基準、勉強しなくっちゃなぁ。。。
償還義務付きの優先株式とか、ファイナンスリースとか、どうなっちゃうの?(>敏腕先生!(笑))
ちょっと仕事に絡みそうだなぁって今ふと思って。
投稿情報: AK | 2009/07/19 12:57
>iloveapple-san
>利用できるものは何でも利用しよう、という性分
…まさにそうなのねー、というのを、日本に帰ってからの仕事で実感しておりますわ(だからこそ、こういう斜めな視点が出てきたんだろうけど)。一方、去年WSJに出てた記事で、会計基準移行時のアービトラージでヘッジファンドが儲けることができるんじゃ?って話があって、それはそこまで簡単じゃないよーと思ったけど。
テック系の会社だと大事ですね、収益計上基準。スーパーなら売ったら現金で入っておしまいだけど、複雑なものを売るほどどの時点でデリバリーがされたかっていうのは、やっぱり操作が可能だし。アップルなんかはスタンスがはっきりしてて、ジョブズのしたいことを全部邪魔させないように会計基準をすっきりさせてるなあーっていっつもおもいます。
投稿情報: lat37n | 2009/07/19 19:41
>AKさん
あいえふあーるえすっていいにくくないですか?わたしはすくなくとも舌かみます。ここは、あいふぁーす(Rのところを若干巻いたやらしめな発音で)統一しましょう。笑
>ファイナンスリースとか償還つき
…先輩、それ私に、勉強しておいてあとで教えろって間接的に言ってませんか?笑
リースは今年すでに所有権移転外リースのオンバラが始まったんですが、BSへの影響はそれなりに緻密にみなきゃいけないと、やっぱりその辺は整理しておかないといけないのはたしかです。
投稿情報: lat37n | 2009/07/19 19:45
日本版SAB104、言いえて妙ですね。日本の基準ってなんで名前があんなに長いんでしょう(笑)。出るのに時間がかかりますが、日本のは懇切丁寧で首尾一貫してるので感心します。
日本GAAPの方が考え方はIFRSに近いのに、実際の適用は腰砕けで抜け道があったりしたのがアダプションで変わるとしたら好ましいことです。コンバージェンスじゃなくて本当に良かった。が、これで会計事務所の仕事が劇的に増えるとは思いませんね~。
投稿情報: ぐら | 2009/10/11 07:59