渡辺千賀さんのエントリー「海外で勉強して働こう」は、それに対する周りの反応含めずーっと読みながら、考えを整理しておりました。帰国して4ヶ月ほど、ずっと考えてきたこととも直接にかかわりますし。その間に、とうとうYahoo!ニュースにまで取り上げられてしまって、国民的話題になりましたね。実名ブログで意見を明確にした千賀さんの勇気には敬服。ですが、それに対するネガティブなコメントの嵐にもちょっと、考えさせられるものがありました。で、完全に出遅れたけど、ゴールデンウィークスペシャル?ということで、おひとつ。
千賀さんのおっしゃってることのうち、
1)日本はもう立ち直れないと思う。
だから、
2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。
だから、
2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。
のうち、(1)は非常に大きい問題ですが、とりあえず今日は飛ばさせていただいて、私はまず、2)に関しては全面的に賛成。1)だから2)、というよりは、2)自体が面白いことだからやってみたらどうだろう?と思ってきたわけです。でもって、帰ってきたければ帰ってくればいいし、 海外をベースにしつつ生きていく、 というのでもいいし。
一応ディクレーマーをつけとくと、わたしアメリカ以外の海外に住んだことがないので、私の視点は常に「アメリカと日本の比較」によるもの、になっていますし、「留学したり海外に仕事で移住したりできない人はどうしたらいいんだろう」という部分の解は正直ありません。でも、「生まれた国以外で普通に働くこと」がこれほど特殊な国民も実は少ないんじゃ?というのがアメリカ時代からの自分の感覚としてあって(「アメリカで働く普通の外国人」で書きました)、そこでも書いたように、世界と共通の言葉や共通のビジネスのバックグラウンドをもち、自国以外にさっさとでていって、そこで普通に仕事をして、っていう軽やかさが日本人にかけているということが気になってました。もう少し、そういうことが普通であっていいし、それが日本を支えることもあるんじゃないかなー、とずっと思っているんですね。
(ちなみに、上記渡辺千賀さんのコラム「働けシリコンバレー」は、そういう「アメリカで普通に働く日本人」が多く紹介されてて、勇気をもつ、と同時に「そっかー、エンジニアとか手に職系じゃないと結構厳しいのかも、、、」という現実も同時に染みとおってくる、いいコラムです。たまに友人が出てたりするのもうれしくて愛読してます)
理由をいくつかあげると、
1.世界が広がることで選択の幅が広がる。
とりあえず、自分がどんなときも基本的に楽観的なのは、「いざとなれば、スーツケースひとつとノートパソコンだけもって日本以外にでてっても仕事できるかな」と思っていることもあると思うんですね。日本がだめになるから逃げ出す。。。とかではなく、自分の置かれた環境によっては日本より住みやすいところがあったら、そのときはそっちにいってもいいよね、という発想。特に、 自分が未体験ゾーンである、 女性が子供を持ってからの日本の働きにくさというのは想像を絶す るそうなので、この辺のプロジェクトが早急に立ち上がらないと自 分もどこかで閉塞感を感じる日が来るのかもしれないし。アメリカも実は子供を持つ女性にまったく優しくない国なのは知っ てるので、どこを目指すべきなのだろう?北欧?(笑)
いきなり北欧。。。は非現実的なんですが、自分の好みで「 住む場所を選ぶ自由、働くスタイルの自由」 を得ることはずっと憧れだし、世界規模でそれができれば、 人生より楽しいかと思います。結局これだけ、 世界中で仕事がつながってて情報が瞬時につたわっちゃうので、 どこに住むか、 というのが究極的には関係なくなっていくんじゃないかなーと思ってます。実際、結局私も、日本に帰ってからもアメリカとばかり仕事してますが、時差はたまにきついにしても、まあこういうもんだと思えば普通にコミュニケーションできますしね。
2.世界がかわることで悩みの質が変わる。
思えば私も、 日本で仕事してたころはちまちました人間関係とかでいちいち胃が 痛くなるくらい悩んでたんですが、アメリカで「ダイバーシティが高いので、他人と自分の考えていることが違うのは前提である」そして「 どう思われてようがとりあえず主張してコミュニケーションしない と職場でいない人にされてしまう」 というワイルドな環境下で必死になる、という経験をして以降、 正直、 職場での細かい人間関係の悩みとかどうでもよくなりました。 何に関しても仕事は仕事、 みたいな割り切り方ができるようになった、というか。もちろん、 アメリカの職場にもポリティクスはありますが、 自分がそれで心を痛めなくなって仕事人生は各段に楽になったと思う。
ぜんぜんレベルが違う話で恐縮ですが、 学習障害をお持ちのお子さんと、 普通のお子さんと両方を育てている知人が「 普通の子のお母さんたちはお母さん同士のライバル争いが熾烈なの だけど、 学習障害をもっている子供のお母さんたちは子供を育てることで必 死なのでそういうのは見たことがない、 結局平和で満たされてるとしょーもないことで争ったりするんじゃ ないか」といっていたことを、日本で職場の人間関係で悩んでいる友人をみていると、たまに思うことなんですね。もちろん、わたしには計り知れない、複雑な人間関係や嫌がらせがあったりするケースもあるはずで、一概にはくくれないけど。でも、ショック療法的に、 日本で閉塞しちゃってる人を海外に放り込むと、 生存本能がよみがえってがんばれたり。。。しないかなぁ。。。
3.世界を知ることで自信もつけば恐れも知る
ともかく優秀なひとっていっぱいいるんだなー、 とあんぐり口があいたりするんですが、 逆にそういう人を知ることで、 自分のポジショニングを考え直したり、 狭いところでの競争からくる変な焦りから開放されたり、 ということもあると思います。
でもって、結構できるじゃん、みたいなのってあると思うんですよね。今も、日本から米系企業にかかわる仕事をしつづけてて、自分以外のメンバーのほうがむしろがっつり、アメリカの中に入り込んでいるのを見ると、私もがんばらなきゃ、と思うと同時にすごくうれしい。「カルチャーの違いがあるとか、英語が完全にネイティブでない、とかいっても、正しいことを熱心にいいつづければつたわる」という自分が信じてたことを、きちんと実践している人がいて、日本のプレゼンスに対して悲観的になりすぎる必要はないかも、と思った次第です。
4.やっぱり英語は共通語である。
英語がビジネスレベルでできれば、英語圏でも働けるし、 日本でも重宝されるのは疑いのない事実。 中途半端な語学力は諸刃の剣。。。って昔書いたけど、 また日本で働いてみて「あ、やっぱちょっとでも、 できないよりできたほうがいいんじゃ」と最近は思ってます。 アメリカでアメリカの企業で働く人として求められる英語力と、 日本の会社で英語の仕事にかかわる人への、 要求水準がちがうからそう思うのかもしれませんが、 少しでもできるに越したことはないですね。で、英語圏に住めば英語ができるようになる、というのは妄想なんですが、いかないよりはずっとまし。
---------------------------------------------------------------------------------------
ところで「海外で留学して働く」で、自分がやっていないのが「 留学」。正直、 そのパスを経ていたらもっといい状態で仕事ができたかも、 と悩んだことは何回もありました。会計事務所が、 アメリカでは数少ない「 大卒で受け入れるプロフェッショナルファーム」 なのでそのまま働けちゃったんですが、サンフランシスコ・ ベイエリアというちょっと特殊な場所では、 職場を一歩出れば大学院卒が平均的な学歴だし、 アメリカのよく知られている大学の学歴は知的レベルの証明的な意味もあります。し、ビジネスの現場に出る前の訓練も学校の中でだいぶ受けられる。なので、 海外に本格的に移住するんだったら、30代半ばでもなんでも、 大学院に行くというのは十分価値があります。まあ、 大学院を卒業しても、外国人が職を見つけるのは、 アメリカでもヨーロッパでも厳しいわけですが、入り口としては一番機能するのではないのでしょうか。
一方で、私にとって「会計士」である、ということも、 選択肢を与えてくれたので、感謝しております。アメリカに「 とんだ」ときも、「ま、 失敗して帰ってきても監査法人ならどこでも働けるよね」 とたかをくくっていたのもありますし、英語圏でさえあれば自分にできる仕事があって、どこでもとりあえず食ってくことはできるなー、という自信があるのも、会計士の基本スキルがあるからでしょう。ので、最近の若い会計士は海外に行きたがらない、と昔の上司に聞いてちょっと憤慨してしまった私。なんでー?もったいないぞー!
さて、(1)日本は立ち直れないのかなぁ。。。に関しては、長くなるのでまたあとで。
くふふ、なんだかとっても話題になっていますね!その中でlat37nさんの落ち着いた見解はその他の「感情論」とは一線を画していますね♪
そもそも私は愛国心があまりないのか、「日本がだめになる」(=日本のプレゼンスが下がる、という意味かしら?)ことにたいする憂いがあまりないというか。
日本のプレゼンスが下がりまくりなのは働いていて感じるものの、私が日本を大好きな理由=ご飯がおいしい、どの国よりも心の通う友達が一杯いる、家族がいる、自分のルーツがある、文化やクリエイティブな面で優れているなどの要素が全て(食べ物除く)物質的なものにつながっていないが故、自分の中で日本という国の位置づけは変わらない気がしてます。おいしいレストランがもし仮に東京からなくなったら自分で作るなりすればいいし。
なので、日本がだめになろうとなかろうと、自分は自分の道を行く!で好きなことを追求した結果(&結婚その他もろもろの要因がありますが)海外に残ってしまったのだと、自分では納得しています。
ちなみに「留学」ですが、留学経験のある私としては、MBA以上にアメリカにおいて重要なのは「アメリカでの職務経験」だと実感しております。その証拠に卒業時の就職活動よりもその後の転職活動の方が格段に簡単だったし。いくら○○大のMBAでも、帰国子女でも、職務経験がないとお話にもなりませんでした。
投稿情報: iloveapple | 2009/05/05 15:13
>iloveapple-san
そうそう、あまりわたしもこの話題に対して悲壮感がないのは、日本は好きだけどそこでしか暮らせない!とは思わないからなんだろうなー。逆に、アメリカに対してもアタッチメントはあまりないので。サンフランシスコは大好きなのだけど。
大学院後の就職については、西海岸だからこそまわりにiloveapple-sanふくめ結構多くの人が現地に残ってるけど、東海岸だとそうでもないみたいですよね。ビザの問題をだいぶ簡単にする、という意味でもエントリーとしては悪くないんだろうけど。
投稿情報: lat37n | 2009/05/05 19:00
おもしろいネタですね。乗っかってみます。
ご存知の通り、僕には「留学」というピースはあれど、「海外でお仕事」というピースはありません。それでもlat37nさんと共有できる部分はけっこうあって、たとえば「別に外国のどこに行ったって生きてけないわけではないな」という感覚はアメリカでの生活がくれたものです。
自分の生い立ちからして、加工立国にして貿易立国という日本の比較優位が失われていく現況は、対岸の火事ではありません。だからこそ前述の「どこでもやってける」感を得たことは、割りと貴重なことだと思いますし、有体物に依拠しない個人がいるってのは我が家からするといいリスクヘッジなんですよね。
米国のmaster degreeは能力証明にはならないまでも、他の要素と複合することで一応のdoor openerとしては機能することにはなるとは思います。留学時代の友人ともよく話すんですが、別に日本でないといけない理由は何にもないんですよね。日本に戻ったのは、ロジックや個人の感情だけで割り切れない要素、例えば家族への思いとか、そんなところもあったりするわけです。
いかん論旨がずれた。えーとそうですね、確かに日本の相対的な力が低下してると仮定して、そんな日本でやってくのに、マーケットがしぼんでもニッチなところで売れる商材を自分の中に揃えておくことはだいじですね。で、日本でその辺の足場固めをしっかりやりつつ、それでいていつでも海外に行ってしまえるようにしておきたいですね。前段の準備は今やってるとこですが、後半はもう一ひねり何かを加えておく必要がありそうです。
まあ、自分が納得するものならともかく、それ以外のしょうもない要素に制約されないようにはしておきたいですね。目指す自由のために。今いっしょにやらせてもらってることも、その一環だと理解してます。これからもどんどん意見交換させてください。
投稿情報: tsuyoshi | 2009/05/06 02:58
>tsuyoshi-san
相対的に見て日本は居心地がいい(もちろん家族のこととか含む)けど、個人として世界で生きていく能力はほしいし、それが留学で養われるものならぜひ海外で学ぶべきだと思います。もちろん、そういう生き方をすべての人に押し付ける気はないのだけど、この時代のひとつの生き方だと思うので。
当面、まずは国内で原野のサバイバル仲間として一緒にがんばりましょうねー。
投稿情報: lat37n | 2009/05/06 09:12
日本はもう駄目だから海外で働こうってことは数年とかじゃなくてずーっと海外で働きましょう、海外で住みましょうということでしょ。本質的に日本はもう駄目だから、海外で働こうというのは日本人辞めて移民しようと言っているのと同じだということを皆忘れているんでは?
日本人でいたいなら海外脱出は根本的にできないので(ちょこちょこ出るのはともかくとして)、頑張って日本を皆良くしましょう。
逆に海外に行って、国籍は日本のままだと長く住めば住むほど違和感を覚えますよ。税金も納めてるし、長く住んでてもアメリカ国籍じゃなければ、アメリカ人にはならないし、選挙権もないし、アメリカの政治家がどんな外人排斥政策をとろうが一言も発言権は無いし、ましてや日本に対して戦争でもしかけた日にはどうするんですか。。と。
投稿情報: Denden | 2009/05/24 04:32
>Denden-san
あら、おひさしぶりのコメント。お元気ですかー?
ちなみに、私は海外で(数年)働いてみてもいいんじゃない?派だけど、それはその先に関して選択肢を持つというミクロなはなしね。あと、はっきり書くのは本文では避けたけど、日本が駄目だからって理由で海外に行って成功できる日本人がそれほどいると思ってないの。ただ、海外にしか生きる場所がない!と覚悟を決めた人のことは応援してます。いろんな人がいるので、日本はどうしても合わない、海外のほうが心地いいしその人自身がいきる、と思ってる人が日本をでることまで止められないし、実際日本以外の国にはそれぞれの良さもありますからねー。あと、日本にいて怖いものを見ないで目を閉じて暮らしていくのは危険だとも思ってます。(千賀さんも、そういう気付きを投げるための爆弾だったんだと私は思ってるけど。)
>国籍は日本のままだと長く住めば住むほど違和感を覚えますよ。
そね、それは私も5年住んだから重々感じてました。海外に完全移住組、特に女性は配偶者が外国人で、その部分で日本以外のほうが住みやすいっていう事情もあったりする(元ネタの渡辺千賀さんしかり)なので、そこの部分で、わたしみたいにずーっと日本人でいることを選んだ人とは違うしね。あと、年取った後のこととか考えると、特にアメリカみたいな国にずーっといるのはしんどかろう、という肌感覚もあります
>「頑張って日本を皆良くしましょう。」
なるほど、Denden氏も高飛びをするつもりはないようで(笑)。わたしも同意ですので、われわれはできることからやりましょうー。
投稿情報: lat37n | 2009/05/25 09:14
数年働いてみるのはいい人生経験になるよね。また、海外に必ずしも住む必要は無いだろうけど、日本だけでなく世界を股にかけて活躍するというのは誰しも思い描く夢だよね。世界を股にかける=海外に移民というのは議論の飛躍があると思うけどね。
あと、確かに海外で無いと活躍できない職業も結構あるので(アート・ファッション系の仕事とかは日本にアート業界の厚みが無いので特にそうですね)、海外に住むのもやむを得ないという人もたくさんみたよ。
投稿情報: Denden | 2009/05/25 20:43
>Denden-san
>日本だけでなく世界を股にかけて活躍する
憧れますよね。私も憧れましたよ。。。時は過ぎていちおう「それっぽいこと」もやるようになっても、なかなかヨーロッパ方面が縁がなくて、東は中国、西は北米までなんだけど。でも、始まってしまうと「時差ぼけの中、いかに体調と仕事の質を保ちつつなんとかサバイブする」っていうかんじで、なんかおもってたほどカッコよくない。。。
>海外に住むのもやむを得ないという人もたくさんみたよ。
そうね、アート・音楽系は、それに価値を見出す層が厚い所にいないとだからね。その世界でもうんとずば抜けていればどこにすんでも、ということは言えるのだろうけれど。。。(例:クラシック界では最果ての地:米国西海岸にすんで世界を巡業する五嶋みどり
投稿情報: lat37n | 2009/05/26 20:15