悪天候の東京を飛び立って9時間後。戻ってきたベイエリアにはいつもどおりのすこーんとした青空が広がっていました。
手持ち荷物の中に入れておいたビジネスカジュアルに着替え、申し訳程度に化粧を直す。今日はミーティングの都合で、空港から客先直行。イミグレーションを抜け、荷物をピックアップするまでの間に、ボスからの電話が既に3回。ボイスメールを聞くも、なにやら興奮していて意味不明なため、これはクライアントについてから話そう、と今は聞かなかったことにする。
パーキングまでのシャトルの中で、荒い運転にぽんぽん弾みながら、ブラックベリーをチェックしていると、あっという間に、アメリカのいつもの日常にまぎれこんでいきます。自分がアメリカ・モードにチューニングしていく、というかんじ。
短い滞在だったけど相変わらず荷物は多くって、四苦八苦しながらトランクに押し込んでいたら、先日綺麗にしたばかりの爪が折れてしまった。仕方ない。。。 パーキングの出口のキャッシャーではおじさんが、チョコレートをぽいっと投げてくれて「今日は暑くなるみたいだよ。安全運転でね」。
SFOのパーキングからは、ほんとにひょい、っというかんじでハイウェイに乗ってしまいます。このシリコンバレーの大動脈 US101号線を走る車は運転が荒くって、初めて使ったときはなかなか左車線にはいりこめないで困ったものだけど、こういうのは慣れの問題、びゅんびゅん飛ばす車の列にまぎれこんで南へ南へ。
たまに日本に帰ると、どんなに仕事や状況がストレスフルであっても、自分はひとりではなくて、守られている、というのを感じます。空港に迎えに来てくれる人がいて、実家に帰れば母親の手料理を味わうことができ、親身に話を聞いてくれる友人がたくさんいる。仕事をしていても何をしていても、あちこちに自分が生まれてからずっと所属していた世界とのつながりがある。その中で四半世紀を過ごした私は、どんなに自立しているつもりでいても、お嬢さん、だったのだろうな、と今にしてみれば思います。育ちも就職先も東京で、中学から大学まで、ずっと付属校の穏やかな文化の中にいた、という、自分の独特の環境もあると思いますが。
アメリカに来て、初めて一人で生活をたちあげた私は、心の底から自由を感じるとともに、生まれて初めて、ひとり、ということを実感したわけでした。 不思議なほど寂しく思うこともなく、忙しい仕事と、どんどん増えた友人たちに囲まれて、楽しくや っているわけですが、いつも一時帰国の後、ひとりで重い荷物を引きずって空港から家や職場に戻る途中、ここでは自分はひとりなんだよな、ということを強く実感します。その分自由でもあり、自由と引き換えに自立しなくてはいけない。その感覚は日本に帰るとふっと緩む、自分の「自立神経」みたいなものを刺激します。
アメリカは、自由な国ですが、決してラクに生きることができることができるわけではないです。悔しい思いもしてきて、何度も「この国がすき・きらい」の波を超えて、そうおもう。自己主張しなければ忘れられるし、大したサービスもないし、大雑把で大味で、腹が立つことも多い。ゆえに、いつも自分の中のある部分が臨戦態勢にある、というか尖っているのだとおもいます。 それでも、やっぱりここの底抜けに青い空、からりと乾いた空気は、なんだか、まあうるさいこといわないでやってみろ、といわれているようであり、この、チューニングの時間が私は結構好きだったりします。
ラジオからはColdplay`Viva la vida"
Coldplayのこの曲はものすごく寂しい歌詞なのだけど、どうしてこんなに綺麗なんだろうと思う。「それでも人生は美しい」のでしょうか。この、タイトルがいいたいのは。
ベイエリアの青い空。ときどきふっと空を見上げて、高い広い水色の空を痛感します。私は東京で1人暮らしを始め、アメリカは夫と来たから自立ではないはずなのに、なぜかアメリカにいるほうが「ひとり」を感じるのは同じような心境なのでしょうか。lat37n さんのような仕事の苦労なんて全然ありませんが、チャレンジしなきゃいけないことは何気に多かったんだなぁと振り返ってみたり。
お帰りなさいませ。チューニングをし終わって、やはりカリフォルニアは故郷のひとつと思っていただければ、ここに住む同志として嬉しいです。
ところで。Coldplay?初めて聞きました。どのラジオ局をよく聴かれているのでしょう?
投稿情報: shina_pooh | 2008/09/06 17:52
今日は楽しかったです。気がついたら3時間くらい経過していましたね。
私もアメリカに来たのが初一人暮らしで、寂しい事も山ほどあったけど今はやって良かったと思っています。
lat37nさんの「同士」としてこれからもよろしくお願いしますね♪
投稿情報: iloveapple | 2008/09/06 19:56
Shina-san
ラジオは気分でかちゃかちゃかえるので、101.3だったと思いますが覚えていないなー。
カリフォルニアはすでに立派な自分の故郷です!旦那さまをサポートし、ここで自分の世界を着実に作ってきたshinaさん、立派だと思いますよー。私は、逆に一人だから頑張れたんだと思うので。。。
投稿情報: lat37n | 2008/09/07 00:05
>iloveapple-san
久しぶりにお会いしたら、カリフォルニア化が進んでるの見てなんだか微笑ましかったです♪
iloveapple-sanとおしゃべりしているとガールズトークの楽しさについ時間を忘れちゃいます。おいしかったですねー、また近々お会いしましょう!
投稿情報: lat37n | 2008/09/07 00:08
いつも楽しく拝見させていただいております。
近いうちに日本の国際会計基準へのアダプションについて何かコメントされることを願っています。
投稿情報: げんぞー | 2008/09/08 00:48
Lat37Nさん
先日はどうも。
海の向こうでの奮闘ぶり、同じ世代、業界の人間として、とても刺激を受けています。そちらで感じたことを、このブログを通じて、いろいろと伝えてくれたら、読者としてはありがたいです。
かつて、ガイジンの上司に使われていた頃、彼我のカルチャーの違い、仕事の仕方の違い、そういったことを学んだことがとても良い経験になったと思っています。ディープな本場の監査実務のルポを今後も期待しております。
また、お会いできるのを楽しみにしております。
投稿情報: cpainvestor | 2008/09/08 08:00
>げんぞーSan
別にコメントいただいたからというわけではないんですが(負けず嫌いなんで 笑)書いてみました。まあ、アダプションするのは流れとしてはもう既定路線ですから、問題は、一本化をどこでやるかだけでしょうね。
投稿情報: lat37n | 2008/09/10 00:13
>cpainvestor-sama
こちらも鋭い分析を今後も楽しみにしています!次回は懇親会つきにしましょうね。もすこし、ゆっくりお話したいですし。。。
投稿情報: lat37n | 2008/09/10 00:17
>アメリカは、自由な国ですが、決してラクに生きることができることができるわけではないです。
>悔しい思いもしてきて、何度も「この国がすき・きらい」の波を超えて、そうおもう。
アメリカですねー
私がアメリカに通った(仕事で)のは25-27歳くらいですが、ずいぶん辛かったので、あの頃よりは随分図太くなった今でもやっていけるかっていうと、あんまり自信はないかなー?
シンガポールは正反対で本当にラクで国全体がgated communityみたいな感じです(gateなのはもちろん政府)。
こんなところにいると、外の辛い世界に復帰できるのかが心配(笑)。
投稿情報: la dolce vita | 2008/09/10 06:31
>la dolce vita -san
ちなみにベイエリアはビジネス環境はやさしくはないけど生活面では、新参者、特にアジア系にはフレンドリーな街ですよ。ヨーロッパとか東海岸の田舎に比べたらずーっとラクに生活できる基盤があります。でも、シンガポールはGated Communityですか。。。それを本気で政府がやってるのがすごいなあ。。。
投稿情報: lat37n | 2008/09/10 17:25