この週末はすばらしい天気でした。いつもサンフランシスコがこういう天気だといいのだけど。
写真は本題とは関係ないですが、サンフランシスコの観光名所のひとつ、Twin Peaksから眺めたSan Francisco Down Townです。
日経ビジネスオンラインより。今年の4月5月、日本での新規株式公開、なんと1月1件ずつしかなかったのですね。2006年度の187社に比べるとこれは異常事態。今年は1999年以来、新規株式公開が最低数になるんじゃないか、といわれているそう。
これを言うと、「ほら、アメリカでもSOXが始まってから新規公開が減って問題になったじゃん」っていわれそうで、SOXコンプライアンスコスト負担の戦犯扱いである会計事務所勤務者としては肩身が狭いですが、この記事を読むと日本の事情はもう少し複雑。まず、「外資に買収されたくない」「上場で調達できる資金があまりにも少なくてメリットが無い」「新興市場のイメージがわるい」ということで、経営者自身が上場意欲を失っている、というのだから。
・・・外資に買収されたくない。自分の育ててきた会社のオーナーであれば、やはり自分の会社を自分でマネージしたい、という気持ちはわかる。でも、「自分であれば外資系にのっとられないような高い企業価値をつくれる」という自信はないのかな。なんというか、三角合併解禁の時のわけのわからない外資脅威論みたいなのにあおられてしまったのではないでしょうか。残念な気持ちがあります。
・・・上場で調達できる資金があまりにも少なくて。これは、マーケットのコンディションももちろんありますが、日本の新興市場で調達できる資金は確かに大きくは無い。でも、コンプライアンスコストはそれなりに発生する。アメリカに研究拠点をもつベンチャーを経営する友人が、「どう考えても、日本で上場してもわが社の資金需要を満たさないし、残されている道は海外での資金調達だけ。これでは日本で研究開発型のベンチャーは育たない」と常々言っていましたが、確かにそうなのかもしれない。
・・・新興市場のイメージが悪い。確かに去年散々話題になった架空循環取引といい、先日のLTTバイオファーマ子会社の詐欺事件といい、お粗末なコンプライアンスを露呈しているのも日本の新興市場です。あと、いくつかの時流にのって大きな上場益を計上したベンチャーも、創業者利益は出したものの、その後業績が低迷しているケースが多い。そういえばマザーズ初期に上場した企業でいまだに「生きている」ところって、って考えると、ちょっと背筋が寒いですよね。
うーん、でも、残念な話だな。上場で一攫千金、みたいな風潮は確かによろしくないですが、企業が成長していくための資金調達の場として、資本市場が機能していないのはもっと残念な話。
該当記事では、上場ではなく大手企業の傘下入りをはたした企業の話が取り上げられていました。記事でも触れられているように、M&AはアメリカのスタートアップのExitのかなり多くを占めます(2005年・6年ころは、アメリカもIPOがとても少なくM&AによるExitが主流でした)。でも、問題は、日本はやっぱり、技術開発系のベンチャーで大手にきちんと評価されてM&Aをする、という素地が凄く少ないのでは、ということです。アメリカではGoogleに買ってもらう、というのは立派なExitになるのだけど日本ではそういう会社が無いですよね。
新興市場に関しては、日本は簡単に上場をさせすぎだよ、という意見もありました。もちろん、バーは高めに設定すべきだと思います、一般投資家からお金をあつめるには。しかし、企業経営者が「上場は目標にならない」というのはまた別の話、なんだか寂しい話だなあ、と思うのは私だけなんでしょうか。
昨日はどうもありがとうございましたm(_)mとても助かりました。
自分の場合、記事に出てくるような町工場の経営者が近い身内にいるので、とてもよくわかるのですが、彼らは経営に口出しされることにものすごく敏感です。「外資系にのっとられないような高い企業価値」という発想以前に、株価と企業価値が彼らの中ではリンクしていませんし。ファイナンスのロジックで話をしても、その手前の感情的な部分で会話が進まないという感じです。
ただ、全体でこれだけ件数が少ないのは自分も驚きでした。製造業はまだしも、その他の産業でも先細ってるんですね。。。
資本市場が果たすべき役割を果たしてない、という点については、我々の仕事的にはやっぱり残念なことですね。
投稿情報: tsuyoshi | 2008/04/28 07:32
>tsuyoshi-san
お役に立てればよかった。武運長久をいのってます。>昨日の件
なるほどね>「外資系にのっとられないような高い企業価値」という発想以前に、株価と企業価値が彼らの中ではリンクしていません」
そういう会社は公開しないでいいのだろうし、これは当然の帰結なのかも。口を出されるの覚悟で外部資本を入れないと会社のビジネスをやっていけないわけではないからそういう決断ができるわけだものね。公開したら創業者がお金持ちになれて工場を拡大できたかもしれないけど、やらない、って選択肢があり「うちは公開しないでやっていけます」っていうのは経営判断だよね。そういう経営者たちに、手数料欲しさで公開をけしかけて引っ張りまわした証券会社とかあったんだろうな、と思うと切ないです。
一方で、今の私は、公開しないかぎり「そもそも会社が存続しない」(か、買収してもらうしかない)、今のシリーズBのお金はいつまで持つ、という計算をしながら走るアメリカのスタートアップばっかり見ているので、この記事に対して何かひっかかったんだと思います。で、本来の役割を果たしている(本当にお金が必要なところに回る)のはやっぱりアメリカの資本市場だな、と思います。もちろん完璧では無いけれどね。
投稿情報: lat37n | 2008/04/28 11:14
こんにちは。私は最近ITベンチャーのIPO準備担当を辞めて外資生保のアカウンティングに転じたので、現場側にいた身として状況は推察できます。
総じて経営者の意欲はかなり衰えていますね、上場の全ての要素でマイナス面ばかり強調されていますから、そのレベル(売上、利益、組織体制など)までもってくだけでひーひー言ってるベンチャーだと、今はすっぱり諦めた方が賢いという向きに流れてると感じていました。
そういうレベルでは企業価値云々という発想は厳しいと思います。そもそも学を捨てて利を目指した人が多いし、自分の利益については敏感なんですね。よく言えば臨機応変なんでしょうけども…ただ社員はそれに失望してバンバン辞めるという悪循環です。資金繰りの自転車操業をしている企業も結構多いです。
EXITがIPOしかないのも問題ですけど、違う次元の話ではないかという気がしています。数は変化すれども質を伴ってる企業の割合はいつも一定だと思うので、ある意味国を挙げての市場創造から始まるような戦略が向いてるのではないでしょうか。そこに(今後リスクとは無縁ではなくなるが)安定的な資金供給が行うことが日本にスーツした金融市場のあり方だと思います。
だっていま、ベンチャーにおカネ入れても焼け石に水ですから…それにほんとに必要なのはおカネじゃなくて人やアイデアや経営哲学なんですよね。ボンボンにおカネ渡してばかりの親と同じではダメでしょう。勉強から取り組みを始めないと根元的に競争力は戻ってこないですよね。
投稿情報: kei | 2008/04/28 20:24
>keiさん
そこまでは誰も面倒見れませんよね>ほんとに必要なのはおカネじゃなくて人やアイデアや経営哲学 というか、そんな会社をそもそも上場させようとしてたんだったら、そもそも市場は機能してないってことだし、他の資本市場参加者(Underwriter, Venture Capitalist)もかなり責任重いと思うんですが。。。
投稿情報: lat37n | 2008/04/28 23:09