先日東京に帰ったときに、某ブログ仲間に「前みたいに写真をもう少し貼ったほうが読者は読むと思うよ、しかも大きく、綺麗にはるべし」といわれました・・・タダでさえもたまに無駄に小難しいのだから、せめてもの気持ち。笑 コレはサンフランシスコ・サンセットビーチの夕日
次回の事務所の研修資料が回ってきて、今回こそIFRSへのコンバージェンスが本題になっていました。IFRS, what? という感じだったアメリカのCPAたちも、だんだん真剣になってきたんだなー、と思いぺらぺらと見る。
米国のコンバージェンスは正直、予定通りにはいっていません。結局米国主導で国際会計基準を作っている風潮になってきているんですが、Business ComboのFAS160 とIAS27、IAS27にはかなり反対もあったのに議論が詰まりきらないまま採択されちゃった様子もあり、欧州諸国が本当にあれでいいのか、というのが心配されています。あと、MOUにははっきり乗っていないけど実はシリアスなのが、LIFOの適用と売上会計基準。Tax メリットがあるLIFOを禁止するのには米産業界からものすごい反発がありますが国際会計基準はLIFOみとめてないし、売上計上基準は「アメリカが複雑すぎ」「でも国際会計基準は何も無さすぎ」とまだ議論がまとまっていない。シンプル化するのはいいけど、アメリカでものすごく売上計上に関する不正が多かったのも事実で、それでいいのか、っていう気は私もたしかにする。(が、もう、アメリカのRev Recのシリーズは複雑すぎて、シンプルにして欲しいとは思う)
それでもSECのCox議長、今、任期中に国際会計基準の採用を米国企業にも認めるようにと大車輪の様子。SEC議長職って大統領の指名なので、ブッシュ政権の終焉とともにポストを外れるであろうことは確実だから、必死なのでしょう。まだ国際会計基準と米国会計基準が「本当に同等」ではない(国際会計基準で決算したほうが、利益があまくなる)という意見があって、結構割れているところなのですが、米国企業に国際会計基準を認める>同じ国内で二つの基準はわかりにくい>やっぱり一つにまとめますか、という動きが必然。最近の流れを見ていると、米国はどんどん、国際会計基準に親和していって、米国基準はそのうちなくなっちゃうんじゃないの?というのが現実的になってきました。うん、アメリカは超合理的なんで、やるときはがっさりやっちゃうでしょうね。
一方で、G8参加国の中ではアメリカとともに「唯一のコンバージェンス路線」をとってしまった日本。日本の会計基準はEUで「同等」と認められ、2009年以降もEU域内で使い続けることができるのは喜ばしいですが、しかし、いつまでそれをやりつづけるのだろう、韓国が、カナダが、ギブアップしてアダプションに向かうなか、「日本は何をがんばっているのだろう。。。」という感じが強くなってきました。
私は会計士ですし、日本と米国の会計基準を弄繰り回して飯の種にしているわけですが、正直に言えば、会計基準は「ものさし」以上の何ものでもない、と思っています。お世話になっている米国勤務の日本の会計士の方とコンバージェンスの話をしたら、その方も同意見で、「メートルとヤード論争みたいなもんだよね」と。で、「じゃあ、日本は、メートルに世界が移行しつつある中で、尺がどんなに正確で有用かっていいはってるようなものですね!」っていうやりとりをして、我ながら言いえて妙ではないか、なんて思ってたんですが、物差しでしかないのでそこであんまり、自前の基準の正しさを主張するアプローチは意味がないと思うんです。
どんな会計基準もできたときから理論的におかしいってことはなくて、それなりにそれぞれの国で見識のあるかたがたが、そのときの時勢に対応して作ってきたものですから、国と国とで比べて違うことがあっても、違うことに意味がある差異がほとんどです。もちろん、Outdatedになっちゃって、実情にそぐわなくなっている、ってものはあるでしょうが。なので、もうこの時代、たとえば「のれんはやっぱり定期償却すべきじゃないか」とか、正直言って、どーでもいいと思うんです。定期償却に理論的裏づけがあることは重々承知していますが、それより、これから先、もっと大事なのは「国と国との」比較可能性を保つことでしょう。そこが、やっぱり会計基準って学者さんが作っているので、自分の信じるところのアプローチにスタックしちゃいがちなのかな、と思っていますが。
10年近く前の「会計基準ビッグバン」のときはたしかに、日本基準が遅れているからキャッチアップすべし、という話だったと思います。が、今この段階では日本基準と国際会計基準、米国会計基準で、日本が圧倒的に遅れている分野はほとんどない(売上計上基準くらいかな)。その意識があるからこそ、日本は「コンバージェンスして、国際会計基準と同等と認められる基準を作っていく(だから日本基準という基準を残す)」という主張をしてきたわけですが、今は、既にそういう議論をしているときではないとおもう。
当面、アメリカと日本のみがコンバージェンスという形で国際会計基準と同等っていうポジションを目指してますが、アメリカは国際会計基準と自国基準を「同時に」開発している立場。昨年末にアメリカがFAS160の公開草案を発表し、相次いで2008年1月にIAS27の改訂版が出た、という流れを見ても、むしろ、米国がリードして会計基準を作っているというのは明らかです(IASBも7人の委員のうち、3人が米国から、しかも2人はFASB関係者となれば、さもありなん)。日本も「新しい世界基準を一緒に作っていく」といっていますが、日本の現行の基準や意見が国際会計基準に反映された、という話は聞いたことがなく、明らかにフォローしていく立場なのは明確です。カナダも韓国も中国もアダプションします。ここで、日本がコンバージェンスにこだわっているのは、やっぱり、「メートルが主流の世界で尺を主張している」ようなモンではないかと。しかも、メートルのほうは永遠に尺に歩み寄ってくれないのに。
さらに、読んでみればわかるんですが、FAS160超みにくい。要は、APB51をリバイスしているだけなんで、なんていうか、つぎはぎして手直しした感が満載。日本、この作業を必死で既存の会計基準に貼り付けていくのか??これだったら、内容が同じでわかりやすく書いているIAS27をそのまま読んじゃうほうがいい。米国がどんどん国際会計基準に対して親和しているのは「口も出し」「同じ方向性に誘導し」「最終的には取り込む」というようなアプローチで、しかも、内容が一緒でもっとわかりやすいものを同時に作っているんだから、うまいな、と思います。しかも、どっちも英語だから、IASBもFASBも横に並べて作業ができる。日本基準は、英訳はされているんでしょうけど、翻訳が入る時点で同時性がかけているわけで、その点でも圧倒的に不利。
IASB理事の山田辰巳氏は、去年の経営財務で「アメリカはそもそも国際会計基準に同化するかもしれない、日本もアダプションを考えたほうがいいんじゃないか」、ってことを指摘されてました。なんか、ASBJの方向と違うことをいってるなあ、と思って引っかかってたんですが、ASBJを代表して世界と交渉している立場の方で、世界の動きを良くご存知だからこその主張だったのでは、と勝手に思っています。
先日、ASBJとIASBの会談があったらしいんですけど、そのプレスリリースで、ASBJは「われわれのコンバージェンスへの取り組みが評価されてうれしい」といい、IASB議長はのっけから「グローバリゼーションは進む一方、国際会計基準は現在109カ国で採用されています」と。・・・ここに、なんだか両者の温度差を感じたのは私だけでしょうか?
確かに。会計基準なんてそもそも全部理論的にそれなりに正しくて、「うちの基準は正しい!」っていうのは論点にはならないんですよね。
主張する側にもそれなりの「立場」があるんでしょうが、だいじなのは「合理性」や「実用性」。立場なんてどうでもいいんですよね。役に立たなければ(比較できなければ)意味無いですもんね。だってみんなが使うルールなんだから。
でも自分がこういう意見に行き着くのは、やはりアメリカの空気を吸っているからなのかなあ、という気も一方でするんですよね。日本にいたらたぶんコンバージェンスの段階で思考停止してそうです。
投稿情報: tsuyoshi | 2008/04/28 21:04
>tsuyoshi-san
ところで、この記事読んでみて。中地元公認会計士協会会長の講演で、2006年のものなので「今は昔」感があるとこともありますし(もう、ハーモナイゼーション路線は消えてますから)言い訳っぽいところもあるんですが、日本の国際会計基準の設定の中での存在感の小ささとか痛いほど感じます。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/67/
最後におっしゃっている「まずは日本経済が強くなければならない」って言うのはほんとそうだったんですけれどね。
確かに、外に出ないと見えないものがいーっぱいありますよね。その辺の感慨に関しては、次回のSF訪問時に語り合いましょ、笑。
投稿情報: lat37n | 2008/04/28 23:19
写真を貼ると印象が変わるのは賛成ですが使いまわしの写真じゃなくて新しく撮った写真のほうがいいですよ。
投稿情報: げんぞー | 2008/04/30 05:40
>げんぞー san
えーっ、この写真前使ったっけ?と思ったら、ホントに使ってました。。。旧ブログ・2006年7月!
貼った写真(しかも、ほぼ2年前)まで、筆者以上に覚えていらっしゃるハードコアな読者様がいることに、恐縮いたしました。苦
投稿情報: lat37n | 2008/04/30 15:34