Stanford GSBのFaculity SeminarでIFRSへのコンバージョンの話をするというので行って参りました。これは本来、GSB卒業生向けのプログラムなのですが、私が年末に米国企業のIFRSのコンバージョンについて付け焼刃で勉強していたのを知っていたとある卒業生の友人が情報を回してくれたもの。こういったセミナー、原則卒業生のみ、と書いてあっても、大体は卒業生以外にもOpenなのだそうです。ちょうど、お友達のiloveapple嬢からもGSBの別のセミナーへのお誘いを受けたりして、意外にもそういった良質のプログラムが公開されていることをしったばかり。こういった機会には、もうすこし積極的に顔をだそうとおもったのでありました。
今回、内容的には仕事上知っていることばかりなのはわかっていましたが、あえて参加したのは細かい内容より、Stanford GSBの卒業生がくるなら、投資家関係、シリコンバレー企業のCFOなど、会計監査とはまた別の視点を持つ方々がどのようにIFRSへのコンバージョンを捕らえているのか聞くいいチャンスかと思ったのが理由です。あと、講師であるGSB Professor、Mary Barth教授がIASBのメンバーの一人であり、制度設計の裏話的な話を聞けないかな、という期待もありました。
スタンフォード大学までたどり着いたはいいのですが、巨大な公園のような美しいキャンパスの中でGSBの建物が見つからず時計を気にしながらぐるぐる迷うはめに。。。やっと「→GSB」という看板を見つけたときは心からほっとしました。
部屋に入ったとき、まず、あまりに年配の方がおおくてびびりました。。。(失礼)。私の隣に座った紳士はGSBの卒業が1970年。後でお話したら、某大手IT企業でFinancial ReportingとInternational Taxの役員職を歴任されて昨年リタイアして独立され、個人でコンサルティングをやってらっしゃるとのことでした。そのほかにも1970年代の卒業生のかたがたくさんいらしたのですが、終了後のレセプションで話を聞いてみると、企業のAudit committeeの方というのがかなりいらしたんですね。なーるほど。一方、若手はほとんどが投資家やアナリスト職のかたでしたが、良く勉強されてて感心。そのほか、日本人女性で、私の前職の事務所出身で、GSB卒業後コンサルティングをされているとても素敵な方におあいすることができました。こういった出会いも、こういうセミナーに参加することの意義のひとつですね。
内容については詳細はまた別途、ですが、印象的だったのは、いくつか。
・後入先出法のあつかいが米国企業では一番おおきなコンバージェンス上の問題。国際会計基準はLIFOをみとめていませんが、米国企業の実に4割がLIFOを採用しています。これは、LIFOに税法上のメリットがあるためでもありますが、税法とも協調しながら変更を模索中とのこと。
・米国の多国籍企業はIFRSの採択に積極的で、実際、某IT系大手などはIFRSのアダプションに向けてのスタディをすべて終え、IASと内輪の会議までもっているそう。そもそも、オペレーションが各国にわたるマルチナショナル企業は、オペレーションをもつ各国でたとえばLPをつくるだけでもその国のルールでファイリングの義務が生じたりするので、IFRSで統一できるならそのほうがレポーティングへのコンプライアンスコストはやすいのだそうです。そこで、ドメスティックなシリコンバレー企業はそういうメリットはないんだ、と噛み付くひとがいましたが、Barth教授は「この細かいUSGAAPにコンプライアンスし続けるより、初期コストはかかってもIFRSを採択するほうが費用は安くなる、とのスタディがあります」と一蹴。
・おそらく今年の夏にはSECはIFRSの採択オプションを米国企業にも許可するのではという「噂」。SEC現議長のコックス氏はIFRS採択推進派で、11月の選挙で風向きが変わってしまう前にそれを通してしまいたいと思っている、との「噂」。
・私の関心は、売上計上基準がIFRSとUSGAAPで細かさの精度がぜんぜん違うことに対し、どういう見解をもっているのかというところが大きかったのですが、Barth教授は「USGAAPがシンプル化します。今の220もの細かい基準は誰もフォローできないし無意味でしょ」とばっさり。投資家筋の男性は「細かいルールがあっても不正をする会社はするし、そうじゃなくてもしない会社はしないしね」と、あまり細かいルールオリエンテッドへの執着はなさそう。意外に企業サイドの方のほうが「きちんとしたInterpretationが無いのはとても怖い」というので意外でした。
・あと、IFRSをAdoptではなく、コンバージェンスしている国がものすごく少ないことにちょっと驚きました。。。ほとんどの国はおとなしくAdoptしているんですよ。コンバージェンスしている米国は、結局ほぼ、「自分の国と同じルール」(Business Combinationなんかは結局文面までほぼ一緒というものが出来上がっています)を一緒に作っているわけで。で、日本は「アダプションではなくコンバージェンス」っていうのに妙にプライドを持っているみたいなんですが、なんかまた、妙なところにこだわったせいでおいていかれるんじゃないでしょうね。心配。。。
終了後、いくつかマニアックな質問をもってBarth教授に質問にいったところ、まだ公表されていないいくつかのResearch Paperを送ってくださるとのこと。こういう機会があったらまた是非積極的に顔をだそうと思ったのでありました。
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