ご無沙汰いたしております。繁忙期渦中に風邪まで引きまして、なんだか散々な目にあっておりました。
わたくし、いままで忙しい時期には絶対体調が悪くならない、という妙な自身があったんですが、CFOからAccount Payableまで全員が風邪を引いているというクライアントのファイナンスチームに囲まれて毎日仕事をしていたら、やっぱり抵抗しきれ無かったようで、繁忙期の一番の山場で風邪をもらってしまい、監査現場で発熱という羽目に。おりしも、仕事的には役員報告会・決算発表の直前で、ここで自分が抜けるわけには行かない状況。アメリカで働いてもう数年たつので、普段だったら、体調がわるくてもがんばる、なんてまったくappreciateされないのがわかっているのでとっとと休みますが、この2日間だけは休めない、というタイミング。なので、薬で熱を下げて騙し騙し、なんとか休まずにすべての業務をこなしたのですが、そういう無理をするといい加減体に来ます。もともと喉にくる風邪だったのですが、何しろミーティングの連続の日々だったため、悪化させてしまい、いまだに咳がしつこく続いてます。
こんなときに風邪を拾ったのも体力が落ちているのだと思うので、全快したらしばらくサボってたジョギングやジム通いを復活させましょう。あとは、エキナセアでもせっせとのみますか。それにしても、アメリカで偉くなるひとって体力がある人が多いんですよねえ。Concurring Reviewerは「僕はもうこの5年風邪を引いていない」というし、他のボスたちもホントに頑丈です。もともと体力には自身があるほうだったのに、アメリカ人を前にすると敗色濃いな、と、病み上がりでレトルトのおかゆをぼそぼそ食べている私の横で中華弁当を綺麗に平らげるボスを見ながらしみじみ思ったのでした。
と、病気グチですみません。。。そんなわけで、仕事以外に興味のあるニュースをピックアップする暇も無かったんですが、ぼーっと日経NETの見出しを見ていて目に付いたのがこれ。
ほー、これほど忙しくなってきたからいい加減女性をまともに使わないとやっていけない、と日本の監査法人もきづいたんですか。どういう女性定着策なんでしょうねえ。と、最初からかちんときてしまったんですが、日本の監査法人の女性の結婚・出産後の定着率はものすごく低いです。私の同期の中でも、結婚して、子供をうんでも残っているという人は10人に1人以下ですね。果てしない残業、出張、のなかで定時で帰って子供との時間を持つというライフスタイルを持つのがほとんど無理、まじめで一生懸命な人ほどつぶれていってしまいますし、賢い人は最初っから、「パートで繁忙期だけお手伝いします」といって非常勤になったり、監査部門ではない調査部門に籍を移したりするのが一般的でした。それは、今もあまり変わっていないと聞いています。
私は前勤務先に入社したばかりの時に、人事担当のパートナーに「女性の妊娠は男性が体を壊して仕事ができないのと一緒で事務所にとっては損失でしかないので、早く結婚してあまり責任の無い下っ端のうちに育てて欲しい」といわれまん丸になった自分の目が零れ落ちるかと思うほど驚いたことがあります。まあ、営利企業を経営する側としては当然の理屈かも知れませんが、それ人事担当が言っちゃだめでしょ。それを思い起こすと、この数年間で日本の監査法人もだいぶ風土が変わったんでしょうかね。
でも、思うんですけど、子供を持っている女性を特別扱いして女性の定着策をあげる、なんていうのはワークしないんですよね。結局、日本の監査法人全体の働き方が変わらないと、結局女性も定着しないんだと思います。全員の残業時間がもう少し減り(業務を効率化すればそれだって不可能じゃないと思うんですが)働き方にフレキシビリティを与える(仕事内容によって在宅勤務やリモートでの仕事をもう少し許すとか)全体がかわらないと、特別扱いをされた女性たちは結局周りからのやっかみの目や居心地の悪さに耐えられないでしょうし、大体それ以外のプロフェッショナルのモチベーションを下げると思う。
アメリカって女性のパートナーもマネジャーも多いし子供持っている人も多いのですが、彼女たちは本当にハードワーカーです。アメリカの方が公的に保証される産休の期間などはむしろ少なく、生まれる前の週まで仕事をして、3ヶ月たったら復帰、なんていう人もたくさんいます。それでも彼女たちがやっていくのは、まず非常に優秀だということもありますが、それが周囲に特別なこと、とされていないからだと思います。私が住んでいるのがカリフォルニアだから、ということもあるでしょうが、「食事は家族と家で食べる」といって帰ってから家からリモートで仕事をしたり、それでも成果をあげていれば別にそれを「何であの人だけ早く帰るんだ」というように見る文化がここには無いわけです。特別扱いされない分、仕事を減らしてもらえる訳でも何でもないです。育児休暇を2年とかとってしまうとひとつしたのランクからやり直しだったり、かなり文化としては厳しいのですが、3人目の子供のときにはさすがに2年のブランクをもった私のボスも、シニアマネジャーからマネジャーに降格になったあと3年でパートナーにあがる、という形で見事にキャリアを復帰させていました。
で、それが可能なのは、いい意味で個人主義で他人の働き方のスタイルを云々しない風土と、あと、別に男性であっても家族が大事で「今日は子供を迎えに行くので早く帰る」というのも普通で、別にフレキシビリティが子供がいる女性特有のものではないこと、それから、全体的に、日本に比べるとやはり、労働時間が少ないことです。会計事務所はアメリカの職場の中では相当労働時間が長いほうですが、それでも私、渡米以降の残業時間は日本にいたときの半分以下です。まあ、女性に限らず、優秀な人を残していける魅力ある職場に日本の監査法人も変わっていって欲しいものです。聞く話聞く話、私と同世代以下では優秀だな、と思っていた人ほどやめていっていますから、それではこれから10年後、20年後が不安で仕方ないですよね。。。
読んでいて面白い視点だと思いました。確かに特別感を感じると働きにくいですよね。。。
私の業界でも、日本の働き方は尋常じゃないみたいです。なんでなんですかね???理解に苦しみます。
投稿情報: iloveapple | 2008/02/24 23:44
>iloveapple-san
こちらの私の同僚たちも、「旦那さんの仕事がとても融通が利く」とか「自分の母親が同居で全部家事と子育てはしてくれている」とか、でないかぎりは、デイケアに月1500ドルとか払ってそれでも6時にはお迎えに行かないといけない、なんてかんじ、かなり大変そうではありますが、でもなんだか日本に比べるとまだ現実感がありますね。毎晩会社でるのが12時とか日本だと普通ですものね。それが、アメリカのようにIBとか法律事務所だけじゃなくて、どこの会社でもそうですよね。あの文化は変わるのでしょうか。わかりません。。。
投稿情報: lat37n | 2008/02/25 00:24
あんまり関係ないですけど,身近な友人(♂)が最近アサインメントが変わって,24時間勤務の状態から,普通の9時5時みたいな生活に変わったとたん急に生活に艶が出てきましたね.それまで数年間は色事は皆無に近かったそうです(本人談).やはり残業時間の長さと出生率には,強い相関関係があるのだろうなと思いました.
投稿情報: J | 2008/02/25 00:38
>Jさん
えーと、日本の問題は子供を作るところまで、ではないんじゃないですか???ちょっとコメントがえしがしにくいです(笑)
まあ、社交や人間関係を含め、人間らしい生活が営めるレベルの勤務時間の限界ってあるとおもいます、ということで。。。
投稿情報: lat37n | 2008/02/25 00:43
そうですね,趣旨から外れてます.絡みにくいネタに一生懸命返していただいて恐縮です.風邪,お大事になさってください.
投稿情報: J | 2008/02/25 00:48
>子供を持っている女性を特別扱いして女性の定着策をあげる、なんていうのはワークしないんですよね。
すごく同感です。子供を持つ女性と持たない女性との間の不均衡も生みますし。
会計士は女性が働きやすい仕事だ、というお話をする方は多いですが、それは「辞めてパートで働いても、単価が高いから」という趣旨でのお話でした。フルタイムで働く女性のワークライフバランスとなると、社内の要因だけでなく、日本の企業社会全体の性格の問題でもあるので、難しいですね。否、女性だけでなく男性もか。
それにしても、
>人事担当のパートナー
そういう職場風土でしたねぇ。
遅きに失した感もありますが、定着策って具体的に何をするんだろう。てか、そんなことまで3社横並びでないと進められないんだろうか。。。
投稿情報: tsuyoshi | 2008/02/25 05:54
>tsuyoshi-san
そうなんですよね>女性が働きやすいという「誤解」。一線をはなれた立場で仕事をする、というのもひとつの洗濯ですが、一企業としては女性にそういうトラックしか残せないのではどうしようもないのではと。でも、これって確かに監査業界に限らず日本で普遍的な問題なのかも。
私は子供を持っている女性と仕事をするのは好きです、彼女たちは限られた時間で仕事をしているのでとても効率がいい。日本にいたころ、そうやって早く帰る彼女たちを、だらだら残業しながら「あの人たち趣味で仕事してるようなもんですよねー」という後輩君に「でもあなたよりもよっぽど仕事はできるけどね」といってやりたくなったことがあったなあ。。。苦笑
投稿情報: lat37n | 2008/02/25 08:54
もう、うんうんうんうんと頷き通しで読んでしまいました。特に会計事務所では顕著な傾向なんでしょう。IT業界はリモートでの仕事や在宅が比較的可能な業種なので、日本でも出産後の復帰率は高いですが、育児や教育、子供の健康など、考えなきゃいけないことが増える分、母親の仕事は2つになりますからね。アメリカのフルタイムで働くスーパーママたちを支えるのは、旦那様の協力意識であり、夫婦共に育児を行う風土が一般的なこと、外の育児サービスなどを上手く利用していること、たくさんの要因のお陰ですね。(もー、書いてることが lat37n さんの繰り返しなんですけど、、)
アメリカなら、lat37n さんご自身も結婚・出産に踏み切れそう・・・ですか?(あ、ブログでは答えにくい質問ですね、苦笑)
投稿情報: shina_pooh | 2008/02/25 12:02
>shina-san
でもねえ、アメリカの外部の育児サービス、たっかいです。デイケアってサンフランシスコ近郊だと月1500ドルとかするので、日本の保育園が月3-4万とか聞くとどっちが恵まれてるかはわかんない、ってかんじです。女性も、きちんとプロフェッショナルとして稼ぐので無ければ家にいたほうがいい、っていう金額ですよね。
うちの女性のパートナーの中にはだんなさんはおうちから不動産をちょっと転がしつつ専業主夫してて、基本的にはお母さんにして一家の大黒柱、なんてひとはいますので、私がそのくらいたくましくなれたらすべての問題は解決するんだろうけど、それほどの覚悟も無いんですよねえ。。。苦笑
投稿情報: lat37n | 2008/02/25 17:35
渡英する前は勤務時間は文字通り9時~17時勤務だと聞かされてたのですが、それを可能にしているのは17時に終わるように集中して働き、かつ優先順位を綿密に決めているからなんですよね。日本では時間の質というものを意識していませんでした、ワークライフバランスを保つ為には意識していないといけないですね。
LAT37さんも仰っているように、イギリスでも驚くのは仕事がフレキシブルであり、かつ周囲の理解が日本よりもはるかに容易に得られることです。子供の幼稚園のお迎え然りです(日本ではしてませんが、こちらではするようになりました)。良い面としては自分で時間をマネージすることが必要であるので、プロフェッショナルとして強く自分を律していないといけず、漠然と時間を費やすよりは有効かつ効率的に時間を使えるようになると思います。日本もぜひこうした労働環境を整えてほしいですね。父親として子供や家族との時間を持てることは非常に良いことだと思うんですが。
投稿情報: Beer Belly | 2008/02/26 13:47
>Beer Belly-san
イギリスはアメリカよりももっとそのあたり徹底していますよね。今ロンドン事務所とは良く連絡取っているんですが、こっちが朝早めに連絡しないと(ロンドン17時=こっち9時なのです)まずもって捕まらない。やっぱりだらだら残業するよりは集中してきちんと仕事を片付けるほうがずっといいですね。そして残った時間は家族のために使う。と。日本はなかなか、そうならないのが難しい。。。
投稿情報: lat37n | 2008/02/26 19:05
Lat37N-sama
「ワーキングスタイルの違い」耳の痛い、ご指摘です。私も昔、ガイジン上司に仕えていたいた頃に、「早く来て早く帰る」ワーキングスタイルに戸惑いを覚えながらも、見習いたいなあと思っていました。ただ、今の自分はと考えると、恥ずかしながら、「純日本式長時間労働」となっています。
最近は、顧客の期待を「大きく上回る」品質を仕事に求めるのはやめようと割り切っていますが、いつも「ちょっぴり上回りたい」と思ってしまいます。その際、自分の段取が悪かったり、スキルの品質が低いと、結局「長時間労働」という解に頼ってしまいます。
効率化の発想だけではなく、「顧客を選別する」というような別の発想が必要なんだろうと最近では思っています。
投稿情報: cpainvestor | 2008/03/01 21:17
>cpainvestor-sama
いや、良くわかります。お客様の期待、上司の期待、どっちも満たしたいがために長時間働いてしまっているところは私もありますので。アメリカにいると、プロフェッショナルファームの従業員の直接の「顧客」はまずはパートナー、ということを、個を大事にしてくれる日本よりも強く感じますし。残念ながら「客や上司を選ぶ」ほどの立場にはいまだなりえていないので、選別までは私は難しいのですが、やっぱり、プロフェッショナルとして期待に応えたい、越したい、という気持ちと効率性のおとしどころを見つけていくの、大事ですよね。。。
投稿情報: lat37n | 2008/03/02 08:49