ビジネスウィークにも出てた「日本食の格付け」論争。(リンクは記事の日本語の翻訳になります)要は、日本政府肝いりで、海外の日本食レストランを「日本食」となのって良いかを認証する機関をつくった、という話。日本食レストラン海外普及推進機構(JRO:Japanse Restaurants Abroad)という名前で、政府から補助金も出ているそうであります。
この「認証制度」の新聞報道を最初にみたときの私の感想は「あほらしい」っていうこと。なんというか、非日本人と交流があって、その中での日本食の位置づけをしっている人の発想ではないですよね。
確かに日本人にとって「これ何??」という日本食レストランにぶちあたる可能性は海外では高いです。が、それは政府が主導でなにかするようなものなのでしょうか。せっかく、今、いまいち世界でのプレゼンスが低い日本の中で、誰もが胸を張っていえる数少ない、グローバルに人気のある生産物が日本食だと思うのに、それをドメスティックな基準で振り回すのはむしろ害ばかりだと思うのです。
サンフランシスコは多国籍な街で各国料理の店が並びますし、私が日々接する同僚や非日本人の友人たちも多様なバックグラウンドをもち、概して食に関しても積極的だし、日本食大好き!というひとも多いです。でも、私が、日本人ではない同僚たちとランチで行くレストランと、日本人の現地在住の友人と行くレストランはかぶらないことがおおいです。前者-Type Aとしましょう、は、多少怪しげなものも出すけれど安価で普通の非日本人の同僚たちにも受けが良く、後者 Type Bはオーセンティックだけれど普通のレストランに比し高価で「日本と同じものをたまには食べたい!」という在住日本人と、お金持ちで本当に舌の肥えたごく一部の非日本人のものだと認識しているから。後者のレストランにいってもたいがいの非日本人には違いがわかりませんし、その場合、高いお金を使わせてしまうだけになってしまう。
ので、ランチで同僚がType Aのレストランに行こうといえば私は同行して、その中で自分が許せるものを食べます。私と同僚たちの違いは、結局、生まれたときからずっと日本食を食べているかそうでないかであって、そこで本当の日本食って言うのは、なーんてことをあまり語ろうと思わない。わかるわけがないですし、それは私の自己満足になっちゃうから。で、ちょっと怪しい「照り焼きチキン定食」でも、油こってりのピザのデリバリーより私にはありがたいわけです。まあ、Type Aであってもおなかを壊すこともないし普通に食べられるレベルのものが出てくること、Type Bのレストランが存在すること(おそらく全米でも本当の大都市と西海岸にしかないと思う)はベイエリアゆえ、なんですが。
その、農林水産省の意図がType Bのレストランだけを認める、いうことだったら、世界の人に日本食を知ってもらうきっかけすらなくすことになると思う。日本と同じクオリティのものを出すレストランなど、食材の確保と経験をつんだシェフの確保をするだけで、とたんに普通に立ち寄って毎日の食事ができる価格帯にならなくなってしまう可能性があるからです。
Type Aのレストラン・・・たとえば、メニューの「みそ汁」が「みそけ」になっていたり(要は日本語を知らない人がみようみまねでメニューを書き写しているのがばればれ)親子丼が半熟でなかったり(アメリカでは卵の生食は危険だとされていて火を通しきっていないとよくないとされている、ので、親子丼は似てもつかないものに調理される可能性が高く、頼んじゃいけないメニューのひとつ)おすしはロール類ばかりだったり(ロール以外の寿司を食べたことがない非日本人は結構います)、というのは、一部の日本人からすると「日本食の看板を上げることでお客をとっている」と思うのかもしれませんが、少なくともアメリカでは市民権を得ているし、確実に非日本人の日本食のファンを増やしていると思う。だったら、いいんじゃないの?と思います。それで、日本に旅行したりして、「本場で食べるともっとおいしいんだ!!」なんて、素直に感動してもらえればいいじゃないですかね。だって、やっぱり、本当の日本食は本場でしか食べられないのなんて当たり前じゃないですか。
海外である国の料理がちょっと誤解されたり、実際と違うクオリティで提供されることは、他の国の料理に関してもいえて、たとえば、インド人の同僚は、サンフランシスコ市内でおいしいとされているインド料理屋について聞くと複雑な顔で「あそこは本当はパキスタン料理なんだけどねえ。。。」といい「本当のインド料理と言えるのは、マウンテンビューの○○とプレザントンの○○とかで、あとは、パキスタン人がやってるところが多いんだよ」といいます。ま、アメリカのフードレビューだとこの二つの国はIndian/Pakistaniってまとめられちゃってることが多いですが、独立から数十年、それぞれにしかわからない微妙な違いは当然あるでしょうし、二国の関係を考えるとそれって日本食問題以上にすさまじいことだと思います。が、たとえばインド政府が「本当のインド料理レストラン以外、インド料理の看板を出すべからず」なーんてことを言い出すとは到底思えませんね。イタリア料理もそう。アメリカのピザ・パスタとイタリアのそれはもうぜんぜん違うものになっていて、イタリア料理の看板を掲げてアメリカ料理を出すレストランなんて腐るほどありますが、それをイタリア人の同僚が憤るかといえば、単にそういう店に行かないで、家でおいしいパスタを作って食べる。それが普通じゃないかなあ。
海外で、ちょっと怪しいけれど、現地の人に「日本食」として人気があるレストランがあっても、それはそれでいいし、そこで「本来の日本食とは」なんて理論を持ち出すのは、現地の人にとっては押し付けですよね。結局、この格付けって日本人旅行者が「騙された」と思わないためだけにしか思えず、政府が乗り出すようなことには思えません。まあ、日本食産業マーケットの売上の大きさと、背後に利権もあるのでしょうが。。。日本人旅行者ががっかりしたくなかったら、事前にインターネットで評判とメニューでも見て、お店の名前が「フジヤマ」とか「トーキョー・エクスプレス」でないことを確かめるという位のことをすればいいんではないですかね(↑上記のような名前のレストランのはずれ率は普通に高い。経験上)
ダイバーシティを認めた上で競争させる、という発想と無縁のこの日本の施策が私は残念だし、今の日本にはこのくらいしか海外に対して守るものがないのか?と思うと、なんだか複雑な気持ちになってしまうのでした。
あ〜わかります。
私がもっと腹立つのは、日本のイタリアン(あるいはフレンチ)しか知らなくて、アメリカやヨーロッパに行って「繊細な味じゃないからイタリアン(フレンチ)じゃない」と言い張る日本人です。
本当のイタリアンってお皿にちょこんと載っているパスタ、とかではなくおおざっぱに作って素材の味を生かしてどかんと出すものなのに。トマトも本来は甘いトマトじゃなくてもっと味わい深いものなのに。
日本人は世界でも有数のグルメだし、舌も肥えていると思うけどどこに行っても「日本式が一番」と暗に示す態度を取る人はちょっと許容範囲が狭いのでは?と思ってしまいますね。
投稿情報: iloveapple | 2008/01/12 16:23
>iloveapple-san
まさに私が感じたのがその、許容範囲が狭いってこと。日本食の中には繊細であるからこそおいしいという領域のものが結構あるし、その繊細さゆえに日本文化は際立っているのだと思うけど、外来のものから何から何まで「これが日本での基準」「それ以外は認めない」っていうのは、繊細なのではなく了見が狭いんだとおもいます。
・・といいつつ、私もオーセンティック日本食を食べる機会を虎視眈々と狙うわけですが。iloveapple-san
日記見て以降、Jin Shoに行きたくて仕方ありません。笑
投稿情報: lat37n | 2008/01/12 22:02
I agree with you. Japanese Gov. gives no room for fusion Japanese foods. They make me so disappointed. Anyways, Happy New Year and take care of yourself.
投稿情報: jk0307 | 2008/01/13 02:55
個人的にはけっこう楽しんでいるんですけどね>なんちゃってJapanese。
日本食に限らず、本国を出た料理はやはり微妙に「本場」と違うものに出来上がっちゃってますよね。でもその解釈の違いが文化若しくは価値観の差を反映していてなるほど面白い、と思います。
例えば、ランチでよく行く会社の傍の日本食レストラン(Korean American経営)では、鍋焼きうどんにオレンジ色のサツマイモがのってきます→にんじんの代用として。「見た目が同じならOK」「表層・表面重視」といった風潮を端的に現している一例だと感じました。
余談ですが、その店の向かいにある韓国人経営のフードスタンドでは韓国人同僚曰く家庭的なkimba(巻き寿司)を食することができます、すごく美味しい。
SFで食べるカレーとデリーで現地の人に連れてってもらったレストラン、日本の中華料理屋と香港の屋台・・・こういう比較をするチャンスをみすみす逃がしてしまう(しまおうとする)とはなんとももったいない。
投稿情報: nerd | 2008/01/13 05:44
>jk0307
Happy new year to you, too!
I wish they could find better way to contribute to the "globalization" of Japanese food culture...
投稿情報: lat37n | 2008/01/13 18:19
>nerd-san
あ、それいってみたーい。>家庭的なkimba。 でも次のランチは飲茶と心にきめたので、その次ね。笑
某O社(CEOが特注日本家屋に住んでいた事で有名なデータベース企業)の日本食食堂では、親子丼には三つ葉の代わりにほうれん草が入るらしい。そして、Ramen (stir fry)というなぞのメニューがあるらしい。Ramen でstir fryって何事だ??ま、そのくらいの違いを面白がれるくらいのほうが、人生得してると私は信じてますよ。
投稿情報: lat37n | 2008/01/13 18:29
>Ramen でstir fryって何事だ??
・・・昔、そういえば郷里に「フランス風ダッチコーヒー」という看板がありました。通勤電車の窓から毎日眺めては卒倒しかけたものです。
投稿情報: nerd | 2008/01/14 01:44
ミルピタスのGreat Mallの映画館横にある日本食レストラン(レストラン名からだけでなく,こういうモールに出店してる店もハズレ率高し)の”KATSUUDON”というメニューに手を出してはいけません.「カツ丼」のTypoかと思ったら,ホントにうどんにトンカツがのっかって出てきた.べしゃべしゃで食えたモンじゃない以前に,ゲロまず~.:)
投稿情報: Yana | 2008/01/14 04:58
>nerd-san
きゃはは、どっちかにしろって感じ。日本の喫茶店のスパゲッティ・ミラネーゼとか(本当のミラノの名産はリゾットであってスパゲティではない)とか、矛盾を内包する食品はあちこちに見られますな。。。
投稿情報: lat37n | 2008/01/15 21:16
>yana
うちの会社の一階のフードコートに入っている日本食店では、照り焼きチキン、照り焼きビーフ、照り焼きサーモンのすべてが丼かうどんで選べます。照り焼きビーフうどんって何事、とショックを受けるほど純粋だったのは数年前のこと。カツラーメンがあるのはどこの日本食やだったかなー。
投稿情報: lat37n | 2008/01/15 21:19
確かに怪しい日本食もたくさんありますが、それはそれで別の料理だと思って食べれば結構いけるものですよね。こちらで有名なWAGAMAMAも、いわゆる日本食とはちょっと違いますが、現地の人には人気があります。私はお昼にJapanese Canteenという丼もののチェーン店に良く行きますが、これは結構いけます。カツカレーやチキンテリヤキなど、メニューは結構普通です。1つ5ポンド(千円強?)近くするので、あまり滅多に食べられませんが。
投稿情報: Beer Belly | 2008/01/16 03:24
>Beer belly-san
Sushiと寿司は別物と思えばいいってかんじですかね。そう思えばカリフォルニアロールなんておいしいわけですし。しかし、ロンドンの日本食高いんですね。ロンドンの物価高もあるんでしょうが、前に友人が、大根なんて高くって、風呂吹き大根なんて贅沢メニューよ、とこぼしてたのを思い出します。
投稿情報: lat37n | 2008/01/17 02:25