年末までに2007年度中の会計的事件ベスト5くらいをあげようかなーと思ってたんですが、年内に時間の余裕がなく、タイミングを逃したと思っていたところ、大御所のブロガーのかたでも年が明けてから2007年のベストなんとか、を発表されていたりするのを発見。私もそれに乗ってみようかと思います。
日本版
1.中央青山監査法人の瓦解
最大手監査法人の一翼への業務停止命令と瓦解。一連の報道は、監査法人業界の潮目が変わりつつあったことを象徴していたと思います。
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2.国際会計基準へのコンバージェンス
「アダプションではなくコンバージェンス」というのが日本の企業会計審議会の主張しているところなのですが、実態を良く見れば、日本が白旗を揚げたのは明確。確かに、日本基準と国際会計基準の間に「意味のある」差異もあるのですが、それを国際的に認めさせる説得力が発揮できないなら、国内でいくら「日本基準はほぼ同等とみとめられている」とか「日本基準には意味があってこういう差異がある」とかいってたってしょうがないんです。会計基準は所詮ツールなので、日本基準が国際的に通用するのでなければ、日本企業にとってGAAPコンバージョンが負担になるという現状がいつまでも続く。これははもう、この際なので、韓国みたいに自国基準を捨てて和訳した国際会計基準を取り入れちゃってもいいんじゃないんですかね。
(参考メディア記事)
3.架空循環取引と新興市場への信頼性下落
NECの子会社、メディアリンクス、加ト吉、、、監査人泣かせの循環取引がいくつも露見しました。循環取引はお金の裏づけがついて回るだけに監査で発見しにくい不正のひとつ。それにしても、売上拡大プレッシャーの大きさに屈し、易い方法に流れる企業を見ていると、日本の企業不正の質が変わってきたのかな、という気持ちになります。
日本で自宅に送られてきていた「公認会計士業務資料集」別冊22号を持って帰ってきたのですが、その中でも最近、株価操作を目的にした粉飾が目立つこと、架空売上計上がその典型的な手法であることが書かれていました。そういう意味で、最近の日本らしい粉飾の手口だといえる気がします。
ちなみに循環取引は英語ではround tripと呼ばれますが、米国ではあまり一般的な不正手段ではありません。何故でしょうね。取引先同士の力関係が日本ほど濃くないから?担当者のターンオーバーが早いから?
(参考メディア記事)
4.会計士4000人合格時代の到来
会計士が1年に4000人増える時代。この時代に合格した会計士の皆様の今後の活躍を心からお祈りするとともに、今後の自分の身の振り方も考えさせられるニュースでした。
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5.日本版SOX法開始に向けてコンプライアンス狂騒曲
日本版SOX法はどこへ行くのか。現場で監査に従事するスタッフから聞こえてくる声は「こんなことをやって本当に粉飾がなくなるのでしょうか」。それにしても、日本のボトムアップ型の意思決定にマッチしない基準が作り上げられてしまったのも混乱の原因のひとつではないでしょうか。(上がわかっていないのに形式的にだけトップダウンだから、下のほうで「何をやっているかの意味がわからない」という声が大きくなる)大体、自分で手を動かさない学者とかエライ先生とかが決めてしまったルールなんで、今後、必要に応じて柔軟に変えていきましょう、位のつもりであってほしい。。。そう願いたい。
ところで、日本に帰国中、「勘定奉行 内部統制対応済み!!」というCMを見たのですが、どのように何を対応したんだろうか、勘定奉行。とても、気になります。。。笑。
アメリカ版
5件も思いつかないなあ、ということで、2007年はむしろ日本のほうが会計的事件の多い年だったのかも。
1.サブプライム問題とレベル3アセット
アメリカで金融機関を中心に早期適用が今年から始まっていたFAS157「公正価値の測定」。2007年11月15日以降に始まる会計年度からすべての会社で適用が開始となり、以降、金融商品を3つのカテゴリーに分けて開示することが必要となります。そのうち、レベル3アセットと呼ばれる「市場価格の裏づけのない金融資産・負債」の質への疑い、つまり「サブプライム問題で痛んだ資産がその中にまだ入っているのではないか」という見方がさらにサブプライム問題をながびかさせているのではないかという説もあり。HSBCのSIVの評価問題(こっちはどちらかというと連結の議論だけど)なんかもあり、ともかく、何がでてくるかわかんないなー、というのがこの関連。
(参考メディア記事)
2.ストックオプション・スキャンダル
すっかり報道されることも少なくなってしまったストックオプション・バックデート問題ですが、いまだに問題のあった会社ではせっせとrestateの作業を続けていますし、裁判中の案件も多くあります。経営者の倫理と会計への理解が問われた事件でしたね。
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アップルはストックオプション・バックデートスキャンダルを乗り切ったか
(参考メディア記事)
3.SOX法スケールダウン開始
あまりにも批判の強かった米国のSOX法。試行錯誤の最初の3年を経てAudit Standard 5の適用開始となり、スケールダウンの方向に向かっています。しかし、おとしどころが難しいよなあ、というのが現場の自分からの感想です。来年にはまた違うルールが出てくるんでしょうかねえ。。。
(関連エントリー)
S.E.C. Planning to Delay Accounting Rules for Small Companies
(参考メディア記事)
Lat37さん、あけましておめでとうございます。LAの同業の者です。
個人的にも、2007はやっぱり中央青山の解散がBig Newsでしたね。僕の入社時の状況(大人気だった)を考えると隔世の感です。あとはやっぱりSOXですね。USではPCAOBのせいで最近はひたすらEfficiencyばかりが強調されていて、個人的には少し本来の目的(Effectiveness)を忘れて振り子が急激に逆にふれすぎじゃないか、って気がします。もちろんバランスをとれということなのでしょうが、本当に落としどころが難しいです(笑)。一方でJ-SOXは結局どこまでやっていいのか明確にわからないため、コンサバに初期のUS-SOX並みにやらないと、っていう風潮が出てきている気が。両方一緒にやっていると、理想のバランスが解って収斂するというよりは、お互いに逆方向に引っ張り合ってなにがいいバランスなのかかえって混乱しちゃうことがあります。まあ、別物だという風に考えてますが(笑)。 Anyway, 今年もよろしくお願いします。
投稿情報: K@LA | 2008/01/03 21:57
新年明けましておめでとうございます。
2007年、ヨーロッパ関連でいえばやはりIFRSへの収斂は大きなニュースでした。日本企業のイギリス子会社等がUKGAAPからIFRSへの変更を検討・開始したことは大きい動きの一つだったと言えます。とはいえ、イギリスで大きいニュースといえば、アメリカにその端を発するものがほとんどでした。
今年もよろしくお願いいたします。
投稿情報: Beer Belly | 2008/01/04 09:40
>K@LA-san
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。ワイン紀行にお越しの際はご連絡ください。
たしかに、2007年は効率性ばかり強調されましたね。ちなみに、わが社のリスク管理ツールでは、low riskの勘定科目にあまりにも監査手続きが多いと「監査手続きが多すぎる」とalertが出るようになりましたよ。笑
投稿情報: lat37n | 2008/01/04 10:05
>Beer Belly san
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
親会社のほうが何もしていないうちに子会社のほうが対応を先に求められて大変、という話をよく聞きますね、IFRS対応では。米国にいると実際は「コンバージェンス?世界が俺たちに合わせてくれるんだろ??」という感覚ですが、日本では大事になってるようです。コンバージェンス、四半期報告、JSOX、日本企業に試練が続きますね。。。
投稿情報: lat37n | 2008/01/04 10:07
遅くなりましたが、こちらでもあけましておめでとうございます。
昨日は情報提供ありがとうございました。顛末は私のブログをご覧くださいませ。。。
このようにまとめていただけると、自分の理解の整理になります。やっぱり中央青山が一番ショッキングでしたね。
少し違った方向性にキャリアの舵を切りつつあるわけですが、この世界の出来事にもしっかりキャッチアップしていきたいと思っています。っていうのは少し欲張りでしょうか?
投稿情報: tsuyoshi | 2008/01/07 19:59
>tsuyoshi-san
あの時は超余裕だったのに、まさかあの後、そんなことになるとは。。。
キャッチアップもしていってくださいな。会計士の看板を下ろすわけじゃないし、監査法人卒業組の方にも必要最低限の情報が得られる位のブログ更新を心がけます。=)
投稿情報: lat37n | 2008/01/07 23:21