ライブドアの内幕執筆の会計士、公認会計士協会が戒告処分 というニュース。会計士協会のプレスリリースはこちら。
えぇーっ、そうなの。。。?と思ったんですけれども。
主な理由は、「信用失墜行為に値すると」いうところだったらしいんですが、どうなんでしょうね。私が著作を読んだ印象では、かなり正直ベースで書かれている印象を受けた一方、監査制度に対する悲観的な意見もみてとれます。そのこと自体をとがめだてするのは違和感がありますし、そんな意見は世の中にあふれていると思いますが、それを現役の会計士がかいちゃまずいよ、ってことだったんでしょうか。うーん。
あとプレスリリースでも触れられていた、「休みの日に会社のキャビネットを勝手にあけて資料を探す」というのはめちゃくちゃ違和感のある手続きではありました(まぁ、一般受けのしそうな刺激的な話をいれようということで書いちゃったんでしょうね)。会社が資料を提供してくれなくて十分な監査手続きができなかった場合は監査範囲が限定されていることで意見を差し控えるというのが原則です(もちろん、意見差し控えには非常に重い意味があるので簡単にできることではありませんが)。で、こっそり盗み見たような資料は監査証拠にはできませんし、アメリカだったらそこで逆に訴訟沙汰になりかねない。少なくとも、普通、パートナーが係る行為ではありませんね。あと、提供してもらえなかったような資料まで見ながら監査契約をきらなかったというのもやっぱり、アメリカのかなり厳密にClient Retention Policyが運用されている中にいる私には違和感が大きいです。・・・もちろん、「絶対に不正をしている、暴かなくてはいけない」という責任感は痛いほどわかるんですが、社会に対して誤解を与える、という意味ではこれはちょっとまずかったかもしれません。
ちなみに、著者の田中さんは会計士資格を返上と「ライブドア監査人の告白~私はなぜ粉飾を止められなかったのか」(ダイヤモンド社)には書いてあったと記憶しているのですが(自分の読書感想エントリー参照)戒告されてらっしゃるということは会計士でいらっしゃったということですね。こう、現在合格者の数が増えている一方で、露出が多かったり、名前がうれていたり、社会に対して存在のある方がなかなかいない業界ですので、これだけ重い経験をされたかたが会計士でい続けてらっしゃることにはある意味ホッとしました。
自分が読んだときは「守秘義務だいじょうぶ?」って思いました。
「信用失墜」で戒告なら、他にも失墜させてそうな方がたくさんいそうなものですが。。。
投稿情報: tsuyoshi | 2007/11/30 12:48
>tsuyoshi-san
プレスリリースによると、『本書の出版に関する消極的な「了解」があったものと認められるので、守秘義務解除の「正当な理由」がないとはいえないと判断した。』・・・ってわかりにくい日本語だけど、守秘義務の問題でってわけではないようですね。
『本書の出版が情報漏洩の不安や監査人への不信感の発生』をあおったのか、については一般の方が読んでどういった感想をもたれたのか聞かないとわからないなあ。
投稿情報: lat37n | 2007/12/01 14:13
うーん。だいぶタイミングが遅くなりましたがコメントさせてください。
>一般の方が読んでどういった感想をもたれたのか聞かないとわからないなあ
というところですが。。。。
Hmm.
I actually read this book after you wrote about it. Of course I am no auditor so I have no idea how abnormal his actions really were. That said, is being abnormal as an auditor really a problem? I mean, suppose you were a policewoman. Suppose you found evidence by doing something out of the ordinary. Does that make you anything less of a good policewoman? Should it? What should a good policewoman do?
業界にいないだけに頓珍漢なことを言うのかもしれませんが、監査人が経済界において果たすべき役割は決して小さくない、とequity investorの立場からちょっと思ったのでコメントしてみました。。。。
投稿情報: itsanyclife | 2007/12/17 20:08
>itsanyclifeさん
おおお、「一般の方」からこのエントリーにコメントつくとは!ありがとうございます。って、equity investorはむしろ「一般の方」ではないけど。笑
ぜんぜん頓珍漢ではないです。むしろ、ちょっと考えてしまいました。確かに、決められたことだけやる「手続書どおり」では発見できないこともありますね。でも、私は監査はマルサとかではないので、当たり前の信頼関係に基づいてできない仕事はやってはいけない、と思っているんですよ。それが、監査の大前提だから。もちろん、あれ?と思ったことやリスクが高い、と思ったことは普通から外れて多くの手続きをしますが、家捜ししないと十分な監査手続ができないような仕事に対してそもそも、意見を出すことがおかしい。たまたま自分が見つけたエリア以外にももっともっと、おかしなことがあるかもしれない。という意味で、abnormal に走る前にするべきこともあったのではないか、と思ってしまうわけです。
What should a good auditor do?
良い監査人とは投資家と市場の安定のために尽くす存在です。教科書どおりに答えれば、監査意見を差し控えて一刻も早くその会社を市場から退場させる、ってことになるでしょう。そしたら、凄腕のequity investorが会社ごと買い上げて大鉈ふるって数年後に再上場させて大もうけしたりして、市場の活性化に寄与したりするかもしれないですしね(嫌味ではないですよ!)
投稿情報: lat37n | 2007/12/17 22:12