ちょっと出遅れた感がありますが、2007年の公認会計士試験、なんと、4,041人という、史上最大の合格者数となったそうであります。
http://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/ronbungoukaku_a.html
ただ、今回制度移行期ですので、旧試験制度時代に二次試験に合格していて、一部の論文式試験のみを受験していた人などを除いた、純粋な受験者数に絞りなおすと、願書提出者18,220人に対し、最終合格者が2,695人となる様子。そこのレイヤーでの合格率16.3%。昨年は最終合格者が1,372人で合格率が8.4%でしたので、大幅増には変わりませんね。
私が2次試験に合格したのが1998年なんですが、そのときの合格者数が650人くらいで(すでに、統計に出てこないほど昔になっているので正確な数字がわからなかった。汗)当時の合格率は6%前後でしたか。まあ、それより昔には5%以下という時代があったんですが。今回の大幅増加は昨今の「会計士が足りない」議論に敏感に反応しての需給調整なのですが、現在会計士が全部で1万6000人くらいしかいないのに、その25%にあたる人間がいきなり増えるわけで、これは、会計士業界に大激震が走るのではないかと思います。まあ、所詮需給調整なので、今後もし人あまりが発生したらまた、あっという間に間口は絞られるのかもしれませんが。でも、やはりトレンドとして人数が増えていくのは間違いないですね。
各監査法人では教育計画を大々的に変えなくちゃいけないでしょう。昨年ですらOJTは大混乱で、仕事のない1年目のスタッフが大量に事務所でぼんやりしていたり、一人につき3人の新人をつけられてマネジャーレベルの人間は大混乱になったり、していたらしいのに。よほど戦略的に教育に取り組まないと、中間層が参ってしまうことでしょうし、新人さんたちも混乱するとおもいます。ちなみに、今年は人材確保のため、新人のお給料値上げに大方の法人は動いて、1年目のお給料自体が私が新人時代よりだいぶ高いらしいんですが、それ、この人数を採用しちゃってもWorkするんでしょうか。
それから人事制度も。これだけ合格させていたら絶対にレベルのばらつきも生じるでしょうし、どんどん競争させて残る人は限られる、という組織になっていかざるを得ないですね。アメリカ的に、5年後残るのは同期の5人のうち1人、パートナーになるのは20人に一人、という組織になっていくのでしょうか。これはもう、意図的に「残るのは厳しい」という文化を打ち出していかざるを得ないですね。
もちろん、別業種に最初から参入する人が増えるのもいいと思います。金融や証券会社、コンサルティングもいいでしょうし、事業会社でキャリアを積むというパスもあっても良いのではないでしょうか。
それにしても、公認会計士という資格自体の意味はこの先ますますなくなっていくでしょうね。われわれ中堅以上の公認会計士は「私たちは難しい試験を受けたのに!」と既得権益が破壊されていくのにむっとしていないで、せっせと自己研鑽に励んで差別化をはからないと。10年後、この4000人世代が中堅層として上がってくるわけですよ。その中には、ものすごい営業力を持つ営業マン会計士とか、3ヶ国語ネイティブなみにしゃべる会計士とか、いるかもしれません。どうせ、会計の専門知識なんてものすごい勢いで入れ替わっていくわけなので、受かった時点の知識量が1万人中の600人だったか、2万人中の3千人だったか、は、あんまり関係なくて、後はどれだけまじめに専門能力を積み上げることに取り組むかです。4000人世代の残った精鋭と10年後は戦わなきゃいけない。これは、ものすごい恐怖ではないでしょうか。
普通にがんばるだけじゃ駄目だなあ。この先の10年は、Uniqueな専門家となるために意図的に「差別化」していかなければ。うーん。会計基準もどんどんコンバージェンスしていくし、それだけ合格させてれば英語ができる子もいっぱいいるだろうし、わたしもぼやぼやしてはいられませぬ。
最後になりましたが、合格された皆様おめでとうございます。Welcome aboard!
LAT37N様
今回の話、まったく同感です。
今年合格した上位10%は、10年後、ものすごい強敵になりますねえ。
いつまでも、DDなぞやっている場合ではなくなってきました。
どこで、とんがって差別化するか、それを考えなくてはならないと日々、危機感を感じます。
やはり、最も重要なのは、専門スキルではなく、販路とブランドなのではないかと思う今日この頃です。
制度のキャッチアップなど、みなと同じことをしている場合ではなくなってきました。
ちなみに、私もまったくの同期合格です。
業界狭いですから、お会いしているかもしれませんね。
(知り合いだったりして。)
投稿情報: cpainvestor | 2007/11/22 05:51
いかに差別化を図るか、とても大事ですよね。また、差別化をいかに表現して相手に伝えるかも欠かせない要素だと思います。専門知識や語学力も、戦略的にマーケットに伝えることができなければ、その価値を認めてもらえないですし。
合格された皆さんには、心からお祝いの言葉を送りたいです。
投稿情報: Beer Belly | 2007/11/22 16:35
こんばんわ、はじめまして。
1996年二次試験合格です。
1年半程前に思い切って業界からフェイドアウトして、日本の法科大学院で法律の勉強をしています。
弁護士資格を持つ会計士を目指してます。
手っ取り早い差別化でしょ(^o^)丿
投稿情報: 勉強中 | 2007/11/23 04:35
以前にお話もしましたし、フラット化の件でブログでもやり取りしましたけど、あらゆるスキルがcommodity化していく現状で、自分を差別化し、維持していくことは本当に難しいです。そして差別化したとして、それが自分のやりたいことと合致していないと意味がないですしね。
就職活動中ということもあり、いろいろと考えます。また相談に乗っていただけるとありがたいです、ゼンパイ。
しかし、チーム内に新人3人。。。つらそう。。。。
投稿情報: tsuyoshi | 2007/11/23 19:16
>cpainvestor-sama
おおっと、同期でしたか!それは確実にどこかでお会いしてることでしょう。東京の補修所にいたのは400人程度でしたものね。。。
もちろん制度や知識のアップデートも大事なのですが、それらは無形固定資産的に償却されていってしまいますよね。自分の「コアのれん」になりうるのが何なのか。。。
↑以上、US基準ではのれんは償却しないという前提に基づいております。笑
投稿情報: lat37n | 2007/11/24 21:30
>勉強中サマ
アメリカの会計事務所では2-3年働いてロースクールに進む人は結構いるんですよ。日本もそれがひとつの流れになったりするかもしれませんね。そういえば私の知人の会計士でも法科大学院に進まれた人が数人います。
投稿情報: lat37n | 2007/11/24 21:32
>Beer Belly -san
語学もどのレベルまで達成するかという問題と常に隣り合わせですしね。ただ読んでかけて一応のコミュニケーションが取れる、というのと、アメリカ人に信頼されるというレベルはまた別だというのを痛感してきました。イギリスでもそれはきっと一緒なのだと思います。
自分のユニークネスを表現する方法も確かに本当に大事ですね。この先どうやって達成していくのか、いろいろ考えるところです。
投稿情報: lat37n | 2007/11/24 21:44
>tsuyoshi-san
いえいえ、こっちこそ相談に乗ってほしいくらい。というか近況をお教えくださいませな。ボストンはどうだった?とか。笑
投稿情報: lat37n | 2007/11/24 22:38
いやー、これはまったく同じような状況になっていますね。。。
ダブル資格者は、実際、どうなんでしょうね?アメリカではあまり見かけなかったな。専門家を二つやるなんて絶対無理(笑)。
個人的には、厳しい時代だとかあまり言わないで「上を食うチャンス」くらいに思うようにしています。
投稿情報: NYlawyer | 2007/11/26 18:06
>NYlawyerさん
会計事務所もTaxのパートナーで、BAR通ってるけど弁護士登録はしてないCPAとかいます。多分Law FirmでもCPAも受かってるけどあえて肩書きに書いてらっしゃらなかったりする方、いるのではないかしら。ダブル資格というより、キャリアパスの過程で試験も受かってきたけど今は使ってないほうは肩書きにしてない、みたいな感じでしょうね。そもそも会計士に関して言えば、CPEの条件がアメリカのほうが日本よりうるさいのでメンテしないと簡単に資格消えちゃうし。
わたくしはもう試験はおなかいっぱい。。。別の差別化を模索いたしましょう。
投稿情報: lat37n | 2007/11/26 18:41