私の親類縁者は会計士とか医者とかが多く、アメリカに住んでて日本のニュースをみて、医療過誤事件が、とか、粉飾決算で会計士も逮捕、とか言うヘッドラインをみると胸がどきどきいたします。もちろん、プロフェッショナルサービスを提供し、サービスに見合ったお給料をいただいている(・・・日本の監査法人のパートナーのお給料はリスクには見合ってないと思いますが)以上、仕方のないことですが。
自分自身も監査では、粉飾幇助なぞにかかわったことはないにしても「もしなにか見過ごしてたらどうしよう」と思うと、監査調書の一枚一枚へにサインオフをするのに慎重になります。パートナーになるまでは責任ないでしょ、って言うのは半分あってて半分間違い、監査報告書の偽造だったりした場合、マネジャー・シニアアソシエイトでも資格剥奪されたりしてますからねえ、アメリカでは。。。
で、こっそり思ってたのは、自分に将来子供が出来てもこの2種類の商売はすすめまい、ということ。笑。しかし、昨今、アメリカはクリーニング屋さんでも67ミリオンの訴訟を抱えるご時世なので、安全な仕事なんてこの世にないんじゃないかと思った次第。
最近アメリカで話題だった67million "pantsuit"とは、Roy Pearson氏が、自分がクリーニングに出したパンツをなくしてしまった韓国人のクリーニング店を相手取って起こしている訴訟なんですが、クリーニング屋さんが掲げていた”Satisfaction Guaranteed”というサインは、彼がお気に入りのパンツを身につけられなかったことによる心理的ダメージも保障する義務があるとかいって、67million(日本円で85億円?)の損害賠償をもとめているもの、はっきり言って言いがかり。で、原告Pearson氏はなんと行政法判事!ってことで、司法関係者とあろうものが恥を知れって私は思ったのですが、頭がおかしいのか売名行為なのかどっちか、なのでしょうか。。。さすがにあまりにも非合理的、ということで、この件、一審で棄却されました。ほっ。”A reasonable consumer would not interpret 'Satisfaction Guaranteed' to mean that a merchant is required to satisfy a customer's unreasonable demands”そりゃそうだ、って話ですが、、、それだけのためにクリーニング屋さんが被った精神的損害(まあ、ある意味宣伝になったかもしれませんが。。。)とか、周りの被った迷惑とか考えると、なんとも幼稚な話。アメリカって怖いところですねえ。
さてさて、アメリカの会計事務所はたいてい訴訟を抱えてますが、1ミリオンもしない監査契約に対しても訴えられる金額が200ミリオンとかなので腰が抜けそうになるわけです。無論、保険はかけているわけですが、それってリーズナブルなのかなあ、というのがいつも思うところ。もちろん、監査報酬額ではなく投資家が被った損害額にたいして訴訟は起こされるわけでなんで金額が監査報酬に関係なくなるのは当たり前ですが、まず経営者が責任を追うのは明らかなところだし、監査法人バッシングみたいになるのはリーズナブルでない、と感じます。
日本では会計監査人も株主代表訴訟の対象になる、改正公認会計士法では課徴金制度が設けられ、粉飾幇助の場合は監査報酬の1.5倍の罰金を支払う、などと厳格化の方向ですが、おかげで、周りで「将来パートナーになりたい」なんていう人が誰もいなくなってしまいました(苦笑)。これで、制度はちゃんと回っていくのか、不安に思います。
ちなみに、アメリカの監査法人の中にはリスクアドバイザリー部門みたいなのがあるんですが、そういうところでは他の監査法人が訴訟になったときの専門家からの意見のご提供みたいなサービスに特化している部署があります。こういうの、なんというか、無駄な労力から新しいビジネスが生まれるけれど最終的にみると何に貢献しているのかよくわからんという、あんまり好ましくないループだと思うのは私だけなんでしょーか。
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